手歯止め

手歯止め（てばどめ）とは

手歯止め（てばどめ）、または輪止め（わどめ）は、鉄道車両、自動車、航空機などが、車庫などで長時間停車する際に、勝手に動き出さないように車輪とレールの間、またはタイヤと地面の間に挟むクサビ形の器具です。英語ではハンドスコッチ (Handschoch) やチョック (Chock) と呼ばれます。

概要

主に、鉄道車両や大型自動車（バス、トラック）などの空気ブレーキを使用している車両で用いられます。エンジンやエアーコンプレッサーが停止した状態で長時間停車すると、空気圧が自然に低下し、ブレーキが緩んで車両が動き出す（流転、転動）可能性があります。手歯止めは、この流転を防止するために使用されます。

ただし、手歯止めはあくまで流転を防ぐためのものであり、カーキャッチャーのように走行中の車両を停止させる目的で使用することはできません。無理に使用すると、乗り越えたり脱線・転覆する恐れがあります。

自動車用の手歯止め

バスやトラックなどの大型車両では、通常2個の手歯止めを車載しています。多くは、製造が容易で安価な木製またはゴム製です。タイヤの幅に合わせた厚みがあり、視認性を高めるために黄色などの目立つ色に塗装され、2つ一組でロープで繋がれていることが多いです。

乗用車向けには、車載に便利な折りたたみ式の金属製手歯止めも市販されています。パンク修理やタイヤチェーン装着のためにジャッキアップする際に、車両を安定させる目的で使用されることがあります。一部の車種では、車載工具として標準装備されています。

鉄道車両用の手歯止め

鉄道事業者によっては「ハンドスコッチ」（ハンスコと略される）とも呼ばれます。形状は自動車用と類似していますが、強度の問題から金属製が主流です。ただし、安価で軽量な木製やプラスチック製のものも存在します。車輪やレールの幅に合わせて自動車用よりも薄い形状をしています。

手歯止めを装着したまま車両を走行させようとすると、車輪が手歯止めに乗り上げるなどして脱線する危険性や、空転により車輪やレール、各種機器を破損させる恐れがあります。そのため、使用中は運転台や車外に「手歯止使用中」などの表示を行うのが一般的です。

過去には、手歯止めが使用されていることに気づかずに列車を出区させようとして走行不能となり、列車遅延や運休が発生した事例もあります。近年では、モニタ装置を装備する車両において、各車両の手歯止め掛けにセンサーを取り付け、どの車両の手歯止めが解除されていないかを警告する機能を備えるものもあります。

より根本的な対策として、車両が勝手に動き出すのを防ぎつつ、動力で乗り越えようとした場合には破損して脱線を防ぐ、適切な強度の手歯止めを開発する試みも行われています。例えば、吹田総合車両所京都支所構内脱線事故を受けて、JR西日本では、2022年9月12日現在、プラスチック製手歯止めの導入を進めています。

関連項目

ブレーキ
鉄道のブレーキ
手ブレーキ
留置ブレーキ
* 保安装置

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