手甲

手甲（てっこう、てこう・手っ甲）とは、腕から手の甲にかけて装着する装身具、あるいは武具の一種です。主に、汚れ、外傷、寒さ、日射から肌や体を守るために用いられ、革や布などの素材で作られています。手首には紐や小鉤（こはぜ）で固定し、手の甲は中指側に縫い付けられた輪を通して固定するのが一般的です。

歴史

手甲の歴史は非常に古く、古墳時代の鷹匠埴輪には、鷹の止まり木となる腕を保護する目的で手甲が象られているのが確認されています。また、武具としては、刀などから手の甲や手首を守るために用いられたという説もあります。このように、手甲は古くから実用的な目的で使用されてきたと考えられます。

種類と類例

手甲には様々な種類があり、形状や機能によっていくつかの分類が可能です。

半手甲・半手筒: 手首から肘に向かい、三寸から四寸程度の長さのものです。
山付き手甲: 手の甲を覆う形状で、甲の部分が椀状に盛り上がったものです。
長手甲: 手首から上腕までを覆う形状のものです。
手甲付き手筒: 長手甲の一種で、手の甲まで覆う形状のものです。

また、手甲と形状的に重複する部分を持つものとして、手筒や腕貫があります。これらはしばしば混同されたり、同じ意味で使われたりすることもあります。それぞれの意味を体系的に整理すると、以下のようになります。

手甲: 手の甲から腕までを覆うもので、籠手（こて）などを含む広義の手筒。
手筒: 主に布製で手の甲は覆わず、腕貫と同じ意味で使われることもある。
腕貫: 汚れ防止のために使われる布製のもので、腕袋や腕に通す編み籠の筒を指す。
腕袋: 毛糸や綿などで作られた保温や防寒のための筒状の布。
腕貫（編み籠）: 籐や竹で編まれた筒で、毛筆での記述や汗による着物の張り付きを防ぐために使用。

用例

手甲は、時代の変遷とともに使われなくなったものもありますが、現在でも様々な場面で使われています。

武具: 武者鎧の籠手として、戦で使用された。
武芸: 武士や忍者、渡世人などが護身用として使用した革製や刺子入りの布製のもの。
旅支度: 飛脚が日除けや汗拭きとして使用した布製のもの。
職人の作業着: 庭師、鳶職、大工などが、刃物や材料による外傷から身を守るために使用する。袖の上から装着することで、袖が邪魔になるのを防ぐ。
作業着: 腕の汚れ防止や袖口からの異物侵入を防ぐために使用。
野外活動: 農作業などで日焼け防止として使用。
祭りの装束: 太鼓打ちなど、祭りの装束として実用や正装、扮装として用いられる。
ファッション: 「和のリストバンド」として、アクセサリー感覚で用いられる。
スポーツ: 釣りやバスケットボールで、竿や球の感触を損なわない防寒具として使用。
* 神職: 夏場の汗対策として、竹製の腕貫（汗除）を使用。

このように、手甲は古くから実用的な目的で使用されてきただけでなく、現代でも多様な用途でその機能を発揮しています。

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