手鎖

手鎖とは

手鎖（てじょう）は、江戸時代に存在した独特な刑罰で、未決勾留や軽微な犯罪者に対して施行されました。この刑罰は、受刑者の両手に瓢箪型の鉄製の手錠をかけ、一定の期間自宅で謹慎させることを基本としていました。厳密には、これに該当するのは三十日、五十日、百日という期間の手鎖で、罪の軽重によって執行期間が異なりました。

執行方法

手鎖の期間中、受刑者は自宅にいながらも、日常生活において制約を受けました。食事やトイレなどの基本的な行為にさえ、人の手を借りなければならず、その影響で生活は著しく困難になりました。また、三十日、五十日の手鎖では五日ごと、百日手鎖では隔日で同心が来て封印を確認するという仕組みがありました。手鎖は、ただの刑罰としてだけではなく、過料に付加されることが多く、過料を支払えない者に対して代わりに科されることもありました。

刑罰の一環として

手鎖は、逃亡の可能性が低い未決囚や、金公事で敗訴した者が判決に従わない場合の督促手段としても利用されました。また、江戸時代前期には、手鎖を外したことが重罪として扱われることもありました。具体的には、御定書百箇条によって、過怠手鎖を外した者には倍の日数が科せられ、吟味中手鎖の対象者にも厳しい処罰がありました。

明治時代への移行

明治に入り、手鎖は一旦は刑罰としては廃止されましたが、取り調べや受刑者への処罰目的で拷問道具として使用されることが許可されました。この期間の手鎖は実質的には拷問の一形態と見做されるようになり、手鎖の制度的な存在意義は大きく変化しました。具体的には、明治6年には「棒鎖」という新たな刑が登場し、その執行方法は手鎖とは異なり、鉄棒を両足に取り付けた状態で行われました。

棒鎖の概要

棒鎖は、受刑者が立った状態で日中の半日を拘束されるもので、その適用は選択的に特定の犯罪者に限定されました。しかし、明治15年に施行された旧刑法の下で、棒鎖は廃止され、従来の手鎖を利用した方法は主に民間の懲戒用の道具として残されました。及び、実際に使用されたのはそれ以降、非公式な場面においてのみとなりました。

結論

手鎖は、江戸時代の刑罰文化の一端を形成し、その後の法律制度や刑罰形態の変遷に影響を与えました。手鎖の制度は終焉を迎えましたが、その存在は日本の法制度における重要な歴史として、後の研究や議論の材料となっています。

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