才葉抄

才葉抄（さいようしょう）の概要

『才葉抄』は平安時代末期に成立した書論書であり、書道や書法についての実践的な解説が収められています。この書の起源は、1177年7月28日に藤原教長が高野山の庵室で、世尊寺家の藤原伊経に対して話した内容に由来しています。後に伊経がその口伝の内容を文章化したのが『才葉抄』です。そのため、著者として藤原教長や藤原伊経の名が挙げられることがあります。

現存本の背景

『才葉抄』の現存本は、奥書に基づき、藤原伊経の子、藤原行能によって門人の千代丸に写本として与えられたものとされています。具体的には、承元3年5月8日（1209年6月11日）の日に行われたと伝わっています。また、この写本には藤原教家が創始した流派が後嵯峨院政（13世紀中期）時代に流行した弘誓院流に対する批評の一節が含まれており、後世に加筆された可能性があります。

内容構成と書法

全48箇条からなる『才葉抄』は、特に書法に関連する実技的な内容に焦点を当てています。書法の技術や方法について具体的な解説がなされており、作品を手掛ける上での指針となる資料が提供されています。しかし、同じ時代に存在していた藤原忠通の法性寺流に対しては批判的な意見も述べられています。この法性寺流も名手が存在していたことから、教長がその流派を批判することが矛盾しているとの指摘もあります。

批判の背景

藤原教長が法性寺流を批判した理由は明確ではなく、彼が世尊寺流の継承者である藤原伊経の影響を受けたからとも考えられます。一方で、保元の乱の際に忠通と対立した経緯から、個人的な立場が批判に影響を与えた可能性も否定できません。このような流派間の対抗関係は、書道の発展にも影響を及ぼしており、当時の文化的背景を理解する上で重要な要素となります。

参考文献

『才葉抄』に関する詳しい研究は宮崎肇による著作や、鎌倉遺文研究会編の資料などに記されており、特に「中世書流の成立 -世尊寺家と世尊寺流-」という記事では、関連する情報が提供されています。これらの文献を通じて、当時の書道や流派の関係についてさらに深く理解することができるでしょう。

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