技術省

イギリス技術省：軍事から民生への転換を図った官庁

1964年から1970年まで存在したイギリスの技術省は、国家の研究開発政策を大きく転換させた重要な行政機関でした。保守党から労働党への政権交代を機に誕生した同省は、それまで軍事研究に偏っていた国家予算の配分を、民生用研究へと大胆にシフトさせる役割を担いました。その目的は、政府主導の研究開発投資を通じて新たな産業を生み出し、イギリス経済の活性化を図ることにありました。

設立の背景：科学革命と社会主義

技術省設立の背景には、ハロルド・ウィルソン労働党党首が提唱した「科学革命」構想がありました。ウィルソン党首は、科学技術の発展を社会主義体制と融合させることで、イギリス社会の変革を目指す政策を掲げていました。長年にわたり巨額の資金を軍事研究に投入してきたイギリス政府は、その資金を民生分野に転換することで、世界をリードする新たな産業を創出できると考えていました。

この構想に基づき、技術省は既存の省庁から関連部門を吸収・統合する形で発足しました。航空省からは航空機製造関連部門、商務省からは造船分野を引き継ぎ、新たな体制の下で研究開発を推進しました。特に、電子計算機、工作機械、電子工業、電気通信といった分野を重点的に支援し、政府からの委託研究を拡大していきました。

組織と活動：地域開発への貢献

技術省は、研究開発を効果的に推進するために、行政機構の強化にも注力しました。全国8カ所に地域局を設置し、大学、国立研究所、民間企業などを結ぶネットワークを構築しました。これは、地域経済の活性化を図る国家政策と連携し、研究成果の地域社会への還元を促進する狙いがありました。

編入と改組：変遷と継承

技術省は、設立後も組織改編を繰り返しました。1967年には航空省、1969年には動力省が編入され、その規模と役割は拡大していきました。しかし、1970年には通商産業省へと改組され、技術省としての歴史に幕を閉じました。

短い期間での活動でしたが、技術省はイギリスの科学技術政策において大きな転換点となりました。軍事研究から民生研究へのシフト、政府主導による研究開発投資、そして地域開発への貢献という技術省の活動は、後のイギリスの科学技術政策にも大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

（このセクションには、技術省に関する歴史資料や文献リストを挿入してください。）

関連項目

イギリスの航空機産業
エネルギー省
* ビジネス・イノベーション・技能省

もう一度検索