折鶴お千

映画『折鶴お千』について

『折鶴お千』（おりづるおせん）は、1935年に公開された溝口健二監督による日本のサイレント映画です。主演は山田五十鈴が務め、泉鏡花の小説『売色鴨南蛮』を原作としています。

あらすじ

物語は、医師の秦宗吉が、遅れた電車を待つ間に、かつて自殺をしようとした自分を救ってくれた芸者のお千のことを回想するところから始まります。

お千は、悪徳な骨董屋に利用されていましたが、勇気を持って彼らと決別し、宗吉のために献身的に尽くし、彼の医学研究を支えました。彼女は、自分が宗吉の祖母の生まれ変わりだと信じ、その願いを叶えていると感じていました。しかし、ある日、窃盗と売春の疑いで逮捕されてしまいます。悲痛な別れの際、彼女は着物から取り出した折鶴を宗吉に託しました。

宗吉の回想は、電車が到着したことで中断されます。彼は、意識を失った乗客の緊急治療のために呼び出され、病院へ搬送されたお千は心的外傷を負い、もはや誰も認識できなくなってしまいます。

スタッフ

監督: 溝口健二
脚本: 高島達之助
原作: 泉鏡花 (小説『売色鴨南蛮』)
撮影: 三木稔
美術: 小栗美二
選曲 / 解説: 松井翠声

キャスト

お千: 山田五十鈴
秦宗吉: 夏川大二郎
浮木: 芳沢一郎
熊沢: 芝田新
松田: 藤井源市
教授: 中野英治
甘谷: 鳥井正
盃の平四郎: 北村純一
お袖: 滝沢静子
宗吉の祖母: 伊藤すゑ

作品の魅力

この映画は、サイレント映画でありながら、登場人物たちの感情や心の動きを繊細に描き出しています。特に、山田五十鈴演じるお千の、献身的な愛と悲劇的な運命は、観る者の心を深く揺さぶります。溝口健二監督の卓越した演出と、俳優たちの迫真の演技が、この作品を不朽の名作として輝かせています。

その他

映画は、当時の社会状況や風俗を反映しており、歴史的な資料としても価値があります。また、泉鏡花の原作小説と映画との比較も、作品をより深く理解する上で興味深い視点を提供してくれます。

外部リンク

allcinema
日本映画データベース
KINENOTE
IMDb
文化庁日本映画情報システム
国立映画アーカイブ
松竹
コトバンク

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