抱きしめたい (グラント・グリーンのアルバム)

ジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンが1966年に発表したスタジオ・アルバム『抱きしめたい』は、1965年に録音された作品です。原題はビートルズのヒット曲と同じ「I Want to Hold Your Hand」となっています。

このアルバムの制作にあたっては、グリーンの過去のリーダー作品、例えば1965年発表の『トーキン・アバウト』や1967年発表の『ストリート・オブ・ドリームス』でも共演したオルガン奏者ラリー・ヤングとドラムス奏者エルヴィン・ジョーンズが再びリズム・セクションとして参加しています。さらに、テナー・サクソフォーン奏者のハンク・モブレーも本作に加わりました。ちなみに、グリーンとモブレーは以前にも共演経験があり、1961年にモブレーのリーダー・アルバム『ワークアウト』（発表は1962年）の録音に参加しています。

『抱きしめたい』に収録されているのは、全てカヴァー楽曲です。その選曲は、ジャズの世界で古典とされているスタンダード曲と、アルバムが制作された当時のヒット曲に大きく分けられます。中でもアルバムのタイトルにもなっている「抱きしめたい」は、世界的に有名なビートルズの同名曲をカヴァーしたものであり、このバージョンでは軽快なボサノヴァのリズムに乗せたアレンジが施されています。

参加ミュージシャンは以下の通りです。

グラント・グリーン - ギター
ハンク・モブレー - テナー・サクソフォーン（「ジス・クッド・ビー・ザ・スタート・オブ・サムシング」を除く全ての楽曲）
ラリー・ヤング - ハモンドオルガン
エルヴィン・ジョーンズ - ドラムス

この強力なカルテットによる演奏は、音楽評論家からも高い評価を受けています。オールミュージックのスティーヴ・ヒューイは、このアルバムに5点満点中4.5点という高得点を与えました。ヒューイは、このカルテット編成が見せる演奏について、リズムにおけるメンバー間の相互作用や、各ソリストのハーモニーの選択といった面で、繊細ながらも先進的なアプローチを示していると評価しました。また、オルガンとギターという組み合わせによるバンドが生み出した作品の中でも、『抱きしめたい』は特に洗練されており、聴く者にとって非常に魅力的で愛すべき作品の一つであると称賛しています。

収録曲は以下の6曲です。

「抱きしめたい」 - "I Want to Hold Your Hand" (John Lennon, Paul McCartney) - 7:24
「スピーク・ロウ」 - "Speak Low" (Kurt Weill, Ogden Nash) - 7:14
「星影のステラ」 - "Stella by Starlight" (Victor Young, Ned Washington) - 6:31
「コルコヴァド（静かな夜）」 - "Corcovado (Quiet Nights)" (Antônio Carlos Jobim) - 6:00
「ジス・クッド・ビー・ザ・スタート・オブ・サムシング」 - "This Could Be the Start of Something" (Steve Allen) - 7:08
「アット・ロング・ラスト・ラヴ」 - "At Long Last Love" (Cole Porter) - 7:17

このように、『抱きしめたい』は、グラント・グリーンが信頼する実力派ミュージシャンたちと共に、時代やジャンルを超えた様々な楽曲に独自の解釈とアレンジを加えて作り上げたアルバムです。その高い演奏技術と、カルテットならではの緊密なアンサンブルによって、ジャズファンに長く愛され続けている名盤と言えるでしょう。

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