抽せん馬

抽せん馬（ちゅうせんば）についての解説

抽せん馬とは、競馬運営団体が購入した競走馬を抽選で会員に割り当てる制度です。この制度は、会員が自主的に馬を購入するだけでは十分な新馬の供給が難しくなることを受けて設けられました。この仕組みによって、競馬場の馬主を増やし、結果的に競走馬の数を増加させる目的がありました。

制度の起源と歴史

抽せん馬の制度は、イギリスによる植民地化の過程で香港や上海で始まった競馬のスタイルから発展したと考えられています。日本では1881年に横浜のニッポン・レース・クラブが中国から輸入した馬を会員に抽選で配布したのが初めての事例とされています。その後の1884年には、上野の不忍池競馬において共同競馬会社が同様の抽選を実施しました。

このように、競馬会は会員から抽選で選ばれた馬を一定の金額で譲渡し、馬主に必要な調教師の紹介なども行っていました。会員は馬を登録するための登録料を支払う義務があり、レースによっては抽せん馬専用の条件が設けられることもありました。

日本中央競馬会の抽せん馬

日本中央競馬会（JRA）はセリ市で馬を購入し、その後、北海道や宮崎県の育成牧場で訓練を施します。そして、希望する馬主に抽選方式で販売することが特徴です。厳密には、抽せん馬は2003年度より「JRA育成馬」と呼ばれるようになり、従来の「クジ馬」という名称は使われなくなりました。

競馬の呼称については、中央競馬の用語として「抽せん馬」を囲んで「マル抽」と表記し、他の競走馬は「マル市」としましたが、2003年よりその区別が廃止されています。抽せん馬を基にしたレースも存在し、その独自性は今なお多くのファンに支持されています。

抽せん馬と呼馬

競走馬には、馬主が自ら購入したものを「呼馬（よびうま）」と呼びます。かつては抽せん馬の対義語として位置づけられ、呼馬限定のレースが行われることもありました。

代表的な抽せん馬

歴史上の著名な抽せん馬には、以下のような馬が含まれます：

• - ジツホマレ（牝、1953年優駿牝馬）
• - ホウシユウクイン（牝、1958年桜花賞）
• - スターロツチ（牝、1960年優駿牝馬、有馬記念）
• - ルピナス（牝、1968年優駿牝馬）
• - ファイブホープ（牝、1978年優駿牝馬）
• - イソノルーブル（牝、1991年優駿牝馬）
• - アインブライド（牝、1997年阪神3歳牝馬ステークス）
• - タムロチェリー（牝、2001年阪神ジュベナイルフィリーズ）

さらに、地方競馬の抽せん馬制度も存在しますが、中央競馬とは異なり、地方の馬主会が馬を購入し、そこから抽選で馬主が所有権を得るスタイルをとっています。これは「補助馬」や「奨励馬」とも呼ばれ、地方競馬の発展に寄与しています。

このように、抽せん馬制度は日本の競馬の歴史において重要な役割を果たしてきました。競馬ファンにとって、馬との繋がりを持つチャンスを増やし、競馬の興味を広げる手助けとなっています。

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