拍子木

拍子木とは

拍子木（ひょうしぎ）は、木を打ち合わせて音を出す打楽器の一種で、主に拍子をとるために用いられます。古くは「柝（き）」とも呼ばれ、現在でも歌舞伎などの伝統芸能の世界ではこの名称が使われています。拍子木は、堅い木材を細長い四角い棒状に加工したものを2本1組とし、紐で繋いで作られます。打ち合わせると「カンカン」と高く澄んだ音が鳴るのが特徴です。

構造

拍子木は、主に紫檀、黒檀、花梨、樫などの硬い木材が使用されます。これらを細長い四角い棒状に切り出し、2本を1組にして紐で繋ぎます。紐は長めに作られており、使用しないときは首にかけて持ち運ぶことができます。また、紐で繋がれていない「かまぼこ型拍子木」も存在します。拍子木の数え方は、「組」または「対」を用います。

用途

拍子木は、その音色と形状から、さまざまな用途で使われてきました。

楽器として

雅楽や祭りのお囃子など、伝統的な音楽の場でリズムを刻む楽器として用いられます。また、現代音楽においても打楽器として活用されることがあります。そのシンプルな構造からは想像できないほど、多様な音楽表現を可能にします。

相撲で

相撲の呼出しが、力士の名前を呼び上げる際に拍子木を打ちます。大相撲では桜の木で作られた拍子木が使用されており、相撲の世界では、拍子木の音を「柝の音（きのね）」と呼びます。

舞台で

歌舞伎では、芝居の開始や幕切れの合図として拍子木が用いられます。この際、2本の拍子木を打ち合わせます。また、役者の動きや効果音を強調するために「ツケ」という手法で、床に置いた板に拍子木を打ち付けることもあります。歌舞伎の世界では、拍子木の音を「柝の音（きのおと）」と呼びます。

紙芝居で

昭和初期から30年代にかけて、街頭紙芝居屋が拍子木を打ち鳴らしながら町を巡回し、子供たちを集めていました。拍子木は、紙芝居の開始を知らせるための重要な道具でした。

夜回り、夜警

夜警や消防団が夜間に見回りをする際、「戸締り用心、火の用心」と声を上げながら、拍子木を打ち鳴らして歩きました。これは、地域住民に注意を促すための手段でした。

格闘技で

プロボクシングでは、ラウンド終了10秒前を知らせるためにタイムキーパーが拍子木を打ちます。これは世界共通のルールですが、実際に拍子木を使用するのは日本だけで、アメリカなどでは機械が使われています。K-1などの格闘技でも拍子木が使用されることがあります。

市場取引で

証券市場や商品市場で取引が電子化される前は、拍子木を打つことで取引価格の決定を知らせていました。これを「撃柝売買」といい、拍子木が取引の成立を告げる重要な役割を果たしていました。

宗教行事で

祭礼の際には、山車の運行の合図として拍子木が使われます。また、仏教の読経の際や、天理教のおつとめなど、宗教的な儀式で拍子をとるために使用されることがあります。

その他

上泉信綱の兵法書には、水軍が合図に拍子木を使った記述があります。また、福島県では鳥追い行事で子供たちが鳥威しとして拍子木を使用しています。

関連用語

拍子木切り

野菜を細長く切る方法の一つで、約1cm角で長さ5cm程度に切ります。主に根菜類を揚げ物や煮物にする際に用いられます。

送り拍子木

江戸時代には、夜道に拍子木の音だけが響くとき、人々は「送り拍子木の妖怪が出た」と考えました。このことから、拍子木が単なる道具としてだけでなく、人々の想像力を掻き立てる存在でもあったことがわかります。

まとめ

拍子木は、そのシンプルな構造ながら、日本の文化や生活に深く根付いた道具です。楽器として、合図として、時を知らせるものとして、様々な場面でその音を響かせてきました。拍子木の歴史を紐解くことは、日本の伝統文化を理解する上で重要な要素の一つと言えるでしょう。

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