拓跋寔

拓跋寔（たくばつ しょく）：北魏道武帝の父、献明皇帝

拓跋寔（たくばつ しょく、生年不詳 - 371年）は、4世紀の代国の太子であり、後の北魏の初代皇帝となる拓跋珪（道武帝）の父として知られています。彼は、激動の時代を生きた人物であり、その短い生涯の中で、代国の未来を左右する重要な役割を果たしました。北魏建国後、献明皇帝と追諡されています。

生涯

拓跋寔は、代国の君主である拓跋什翼犍（たくばつ じゅうよくけん）と、前燕の創始者である慕容皝（ぼよう こう）の娘である慕容氏の間に生まれました。彼は早くからその才能を認められ、太子に立てられました。また、東部大人（とうぶたいじん）である賀野干（が やかん）の娘を妻に迎え、拓跋部の有力者との関係を強化しました。

371年、代国は大きな危機に見舞われます。長孫斤（ちょうそん きん）という人物が謀反を起こし、拓跋什翼犍を殺害しようとしたのです。この時、拓跋寔は父を庇い、自ら長孫斤の刃を受け、脇腹に重傷を負いました。しかし、彼は重傷を負いながらも、長孫斤を捕らえ、反乱を鎮圧することに成功しました。

しかし、この時の傷がもとで、拓跋寔は同年5月に亡くなってしまいます。彼の死は代国にとって大きな損失であり、拓跋部の将来に暗い影を落としました。しかし、同年7月、彼の息子である拓跋珪が誕生し、後に北魏を建国するという偉業を成し遂げることになります。

宗室

妃：賀氏（代国東部大人 賀野干の娘）
子：拓跋珪（北魏初代皇帝 道武帝）

拓跋珪の即位

拓跋寔の死後、彼の息子である拓跋珪は、幼くして代国の後継者となります。彼は、叔父である拓跋窟咄（たくばつ くつとつ）の庇護を受けながら成長し、386年に北魏を建国しました。道武帝となった彼は、鮮卑族の統一を推し進め、華北に強大な国家を築き上げました。彼の功績は、中国の歴史に大きな影響を与え、南北朝時代の幕開けを告げるものでした。

献明皇帝としての追諡

拓跋寔は、北魏の建国に直接関与したわけではありませんが、彼の息子である拓跋珪が北魏を建国したことにより、献明皇帝として追諡されました。これは、彼の存在が北魏の歴史において重要な意味を持つことを示しています。

拓跋寔は、若くして亡くなった悲劇の皇太子でしたが、彼の勇気と決断力は、代国の危機を救い、北魏建国の礎を築きました。彼の生涯は、激動の時代における一人の英雄の姿を今に伝えています。

参考資料

* 『魏書』 (帝紀第一、帝紀第二、列伝第一)

もう一度検索