拳銃無頼帖シリーズ

「拳銃無頼帖」シリーズは、城戸禮が生み出した小説世界を基盤とし、日本のアクション映画史にその名を刻む作品群です。日活の手によって製作・配給され、1960年代、野口博志（後に野口晴康と改名）監督が一貫してメガホンを取りました。このシリーズの大きな特徴は、全ての作品が色鮮やかなカラーで撮影され、迫力ある日活スコープ（2.35:1）のワイド画面で展開されることです。これは当時の日本映画において、観客に強い印象を与える要素となりました。

シリーズの幕開けは1960年。彗星のごとく現れたスター、赤木圭一郎を主演に迎え、4作品が立て続けに製作されました。これらの初期作品が、シリーズ全体のイメージを決定づけることになります。赤木圭一郎が演じるのは、拳銃の腕は確かでありながらも、危険な裏稼業から足を洗い、平穏な生活を望む一人の男です。しかし、非情な現実が彼の願いを阻み、否応なしにその手に銃を取らざるを得ない宿命を背負っています。彼のクールな佇まいと内に秘めた哀愁は、多くの観客を魅了しました。

そして、このシリーズのもう一人の欠かせない存在が、宍戸錠演じるライバルの殺し屋です。彼もまたプロフェッショナルであり、主人公とは相容れない立場にありながらも、共通の敵である巨大な犯罪組織に立ち向かう際には、図らずも共闘することになります。互いに腕を認め合いながらも、時には対立する二人の独特な関係性が、物語に深みを与えています。主人公とライバルは、作品ごとに異なる役名で登場するのも興味深い点です。

赤木圭一郎が主演した4作品は以下の通りです。

拳銃無頼帖 抜き射ちの竜: 赤木圭一郎は剣崎竜二、宍戸錠はコルトの銀を演じました。
拳銃無頼帖 電光石火の男: 赤木圭一郎は丈二、宍戸錠は五郎として登場します。
拳銃無頼帖 不敵に笑う男: 赤木圭一郎は壇竜四郎、宍戸錠はコルトの謙を演じました。
拳銃無頼帖 明日なき男: 赤木圭一郎は不敵に笑う男と同じく壇竜四郎、宍戸錠はコルトの譲として登場します。

赤木圭一郎主演シリーズは絶頂期を迎えていましたが、彼の不慮の事故による急逝という悲劇によって、一時的に中断を余儀なくされました。これは当時の映画ファンに大きな衝撃を与えた出来事です。

数年の時を経て、シリーズは再び息を吹き返します。今度は主演者を変更し、新たな物語が紡がれました。1964年には高橋英樹主演で「抜き射ちの竜 拳銃の歌」が製作されます。これは初期の代表作「抜き射ちの竜」を意識した作品と言えるでしょう。そして1965年には、小林旭を主演に据えた「拳銃無頼帖 流れ者の群れ」が公開されました。こちらは城戸禮ではなく、松浦健郎が原作を手がけた番外編的な位置づけの作品となっています。

主演者が交代した後期2作品も、カラー・日活スコープという共通のフォーマットは引き継がれ、それぞれの主演俳優の個性を活かしたアクションが展開されました。

「拳銃無頼帖」シリーズは、主人公が抱える裏社会からの脱却という普遍的なテーマ、ライバルとの奇妙な絆、そして日活ならではのスタイリッシュなアクション描写によって、多くの観客を惹きつけました。赤木圭一郎という夭折のスターが生きた証として、また日活アクション映画の重要な一角として、今なお語り継がれるシリーズです。

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