拳銃無頼帖 抜き射ちの竜

映画概要

1960年2月14日に封切られた『拳銃無頼帖 抜き射ちの竜』は、日活が製作・配給したアクション映画です。野口博志（当時の名義は野口晴康）が監督を務め、当時売り出し中だった赤木圭一郎の記念すべき初主演作品となりました。本作は、その後シリーズ化される「拳銃無頼帖シリーズ」の第1弾にあたります。封切り時の同時上映作品は、小杉勇監督、青山恭二主演の『刑事物語 殺人者を挙げろ』でした。

物語のあらすじ

物語の主人公は、早撃ちの腕前で知られる拳銃使い、剣崎竜二。
「抜き射ちの竜」の異名を持つ彼ですが、人を手に掛けることを嫌い、相手の利き腕を正確に撃ち抜いて戦意を喪失させることから、「殺さずの殺し屋」として裏社会にその名が轟いていました。

ある夜、暴力団組長の始末という依頼を受けた竜二は、麻薬中毒による激しい禁断症状に襲われ、肝心な場面で銃を抜くことができず窮地に陥ります。そこへ現れたのが、もう一人の凄腕の殺し屋「コルトの銀」です。銀によって救われた竜二は、銀を用心棒に雇う実業家、楊三元の庇護を受けることになります。

楊は竜二の入院費用を全て負担し、退院後も住居を与えるなど、手厚く面倒を見ます。静かに暮らしたいと願っていた竜二でしたが、楊への義理から彼の用心棒を務めることを承諾します。

竜二は、楊が提供したマンションの一室で、偶然、かつての親友である元ボクサーの三島圭吉と再会します。圭吉は房江というブティック経営者と交際していましたが、自身は麻薬中毒に苦しみ、その代償として八百長試合に関与し、ボクシング界から追放された身でした。

表向きは様々な事業を手掛ける楊でしたが、その実態はボクシングジムを隠れ蓑にする堀田組と組み、大規模な麻薬密輸で巨額の利益を得ている黒幕でした。しかし、警察の捜査の手が堀田組に及び始め、楊は堀田組との関係を清算しようと動き出します。

一方、堀田組組長の堀田は、楊が堀田組抜きで計画している大きな取引の情報を得るため、密かに竜二に接近し協力を持ちかけますが、竜二は返答を保留します。

やがて、取引を終えたばかりの楊一味は、堀田組による襲撃を受けます。銀が堀田組員を退けますが、帰途で警官隊に遭遇。取引を担当した楊の側近・張は、巧みに園芸用の砂を証拠品と見せかけ、その場を切り抜けます。

一連の襲撃から、楊は組織内部に裏切り者がいると察し、その排除を命じます。さらに、竜二と銀に堀田殺害を依頼。人を殺したくない竜二は、堀田殺害を引き受ける代わりに、楊の麻薬によって苦しめられている房江と圭吉を自由にするよう要求します。

竜二は堀田と会い、楊との和解を説得しようと試みますが、同行していた銀が問答無用で堀田を射殺してしまいます。意に反して殺人が行われたことに激怒した竜二は、銀に殴りかかります。

楊は、ナイトクラブのホステスである石井みどりが密告者と繋がっていると考え、彼女を拉致しようとします。偶然みどりと顔見知りだった竜二は、彼女を庇おうと「俺の女だ、関係ない」と嘘をつき、楊の行動を強く制止します。この一件で、楊と竜二の関係は決定的に悪化します。

その後、みどりの兄である石井五郎が竜二の前に現れます。トランペット奏者を装っていた石井の正体は、楊一味を追う潜入麻薬捜査官でした。圭吉が麻薬中毒に苦しむ姿を見ていた竜二に共感を覚えた石井は、楊一味壊滅への協力を依頼します。

一方、密告者が房江であると断定した楊は、彼女を残酷に拷問します。しかし、楊のやり方に反感を抱き始めていた銀は、隙を見て房江を解放します。入院中の圭吉も楊の手下に襲われますが、元ボクサーの腕力で撃退し、逃れた先でみどりに助けられます。

石井捜査官の正体が楊一味に露見し、彼は姿を消します。楊は石井を雇ったのは竜二だと決めつけ、側近の張に竜二の抹殺を命じますが、竜二は張を返り討ちにします。

度重なる楊の非道な行為に怒りを募らせた竜二は、自らの手で楊を倒すことを決意し、楊自身が参加する港での取引現場へと向かいます。そこで竜二の前に立ちはだかったのは、「コルトの銀」でした。避けられない対決の中、竜二は殺さずのポリシーを貫き、銀の利き腕である右肩を撃ち抜きます。その直後、物陰から現れた楊が銀に致命傷を与えます。「馬鹿野郎！」と叫んだ竜二は、楊に銃口を向け倒します。

瀕死の銀は、駆け寄った竜二に、堀田殺害の際に竜二が銃を向けていれば自分が死んでいたであろうと言い、竜二こそが「本物の拳銃使いだ」と称賛して息絶えます。

事件後、現場に駆けつけた石井捜査官は、楊一味の生き残りと共に竜二を逮捕します。連行される竜二を、みどりは「いつまでも待っています」と告げ、切ない別れを見送るのでした。

キャスト・スタッフ

主演の赤木圭一郎が主人公・剣崎竜二を演じ、ヒロインである石井みどり役を浅丘ルリ子が務めました。準主演として「コルトの銀」を宍戸錠が演じています。その他、主要キャストとして香月美奈子（真木房江）、沢本忠雄（三島圭吉）、西村晃（楊三元）、藤村有弘（張）、二本柳寛（堀田重三郎）、草薙幸二郎（石井五郎）ら、日活アクションを支える個性的な俳優陣が揃いました。

監督は野口博志、原作は城戸禮、脚本は山崎巌が手掛けました。音楽は山本直純が担当し、作品の雰囲気を盛り上げています。主題歌は主演の赤木圭一郎自身が歌った『黒い霧の街』、挿入歌には西田佐智子の『一対一のブルース』が使用されました。

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