持弁

持弁（じべん）

持弁は、室町時代に活躍した天台宗の僧であり、足利満詮の子として生まれました。彼は第154世天台座主という重要な地位に就き、その生涯は当時の社会情勢と深く関わっています。また、第4代将軍・足利義持から偏諱を賜り、「持弁」と名乗るようになりました。

生涯

持弁は、詳細な時期は不明ですが、浄土寺に入り、慈弁（近衛道嗣の子）の門下となりました。慈弁は、持弁にとって師であり、仏教の教えを深く学ぶ上で重要な存在でした。応永20年（1413年）に慈弁が亡くなった後、持弁は浄土寺を継ぐことになります。

その後、持弁は応永28年（1421年）4月11日、前座主であった義円（第6代将軍・足利義教）の後を継ぎ、天台座主に就任しました。天台座主は、天台宗における最高の位であり、その地位に就くことは、持弁の宗教的な力量と人望の厚さを示すものでした。

持弁は、応永30年（1423年）には、3人の兄と同様に武家護持僧にも任じられています。これは、足利将軍家と持弁の関係が非常に深く、政治的な影響力も持っていたことを示唆しています。武家護持僧とは、将軍家のために祈祷などを行う僧侶のことで、持弁は宗教的な側面だけでなく、政治的な側面でも足利将軍家を支えていたと考えられます。

また、持弁は文安2年（1445年）3月14日に准后宣下を受けました。准后とは、天皇の后に準じる待遇を受けることを意味し、持弁の高い地位と功績が認められたことを示しています。


持弁の生涯は、室町時代の天台宗における高僧としての活動だけでなく、足利将軍家との深い関わりを通じて、当時の政治や社会にも大きな影響を与えた人物であったといえるでしょう。

参考資料

* 高鳥廉「室町前期における足利満詮流の政治的地位」（初出:『日本歴史』827号、2017年）/所収:高鳥『足利将軍家の政治秩序と寺院』（吉川弘文館、2022年） ISBN 978-4-642-02976-6

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