振り駒

将棋の振り駒：先後を決めるランダムな儀式

将棋の対局開始前に、先手と後手を決める方法として古くから行われているのが「振り駒」です。これは、5枚の歩兵を振って表裏の数を比べることで、先後を決める正式な手順です。この記事では、振り駒のやり方から、プロ棋戦での運用、歴史、そして意外な確率の話まで、詳しく解説します。

振り駒のやり方

振り駒は、通常、記録係が担当します。両対局者が駒を並べた後、記録係は上座側の対局者の歩兵5枚を、両対局者に見せた上で、手のひらでよく混ぜて盤上または近くの平らな場所に落とします。

表向きの歩（「歩」の字が見える面）が多い方が先手、裏向きの歩（「と金」の字が見える面）が多い方が後手となります。駒が重なった場合は、重なった駒を数えない、または上の駒だけ数えないなど、いくつかの解釈が存在し、アマチュア大会などで混乱が生じる可能性があります。そのため、事前にルールを確認しておくことが大切です。

「歩」と「と金」の数が同じだった場合、またはルールによっては特定の条件を満たさない場合は、振り駒をやり直します。また、非公式の対局では、じゃんけん等で先後を決めることもあります。

プロ棋戦での振り駒

プロ棋戦では、記録係が振り駒を行います。タイトル戦などでは、対局開催地の関係者などが振り駒を行うこともあります。近年では、ロボットが振り駒を行うケースも見られました。

プロ棋戦では、記録係は上座側の歩兵5枚を振り、表裏の数を数えて先後を決定します。タイトル戦などでは、畳の上に布を敷いて振り駒を行うこともあります。

番勝負における振り駒

タイトル戦などの番勝負では、第1局と最終局で振り駒を行います。第1局の結果により、以降の対局の先後が交互に決まります。つまり、第1局で先手だった側は、奇数局目を先手、偶数局目を後手となります。最終局は、当日振り駒で先後を決めます。

振り駒の確率

振り駒は、理論上は先後どちらになる確率も1/2です。しかし、実際には、特定の棋士が先手になることが多い、など、必ずしも完全に公平ではないという意見もあります。日本将棋連盟は、公式戦の振り駒結果を統計的に分析していますが、有意な差は見られませんでした。

振り駒にまつわるエピソード

記録係の中には、振り駒の公平性を期すために、5枚の歩を交互に表裏になるように持って振る人もいます。また、番勝負の先後決定方式も、歴史的に変化してきました。以前は、千日手や持将棋も考慮して先後を決めていましたが、現在は第1局の振り駒で最終局まで先後が決まる「一局完結方式」が採用されています。これは、後手番で千日手に持ち込んだ場合の戦術的メリットを考慮した変更です。

振り駒の起源は、「是安吐血の局」という歴史的な対局にまで遡ると言われています。近年では、ロボットによる振り駒も行われるようになっています。

まとめ

振り駒は、将棋において先後を決める重要な儀式であり、その方法や運用には歴史と工夫が凝らされています。一見単純な行為ですが、公平性を保つための細かな配慮や、歴史的な経緯を理解することで、将棋という文化への理解がより深まるでしょう。

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