捕鳥部万

捕鳥部 万について

捕鳥部万（ととりべ の よろず）は、飛鳥時代の武人であり、物部守屋の忠実な家臣として知られています。彼は姓を持たず、捕鳥部という職業集団に属していました。この集団は鳥を捕まえることを専門とした品部であり、物部氏の本拠地である河内国に関わる一族です。捕鳥部万は、その一族の出身である可能性が高いと考えられています。

出自

捕鳥部は鳥を捕らえることを業とした部族であり、物部氏の影響下に存在していました。万は天湯川田奈命の後裔である無姓の鳥取氏の一員だったとも言われ、彼の家系は歴史的な背景を持っています。万の出自は、武人としての資質を示唆する要素でもあります。

経歴

万は用明天皇2年（587年）の丁未の乱に参加し、物部方に所属して戦闘を行いました。彼は約100人の兵を指揮し、主君である物部守屋の邸宅防衛にあたりました。しかし、守屋が討たれた後、万は茅渟県の有真香邑にいる妻の家を経由して逃げることになります。

万は逃げる途中、敵が近づく中、自らの居場所を誤魔化すために竹藪の中で竹を縄で繋ぎ、動かして敵を欺く巧妙な戦術を用いました。敵が近づいた際には、弓矢を放って反撃しました。『日本書紀』によれば、彼は「天皇の楯として勇武を示していたが、今は追い詰められてしまった」と叫びながら、大声で助けを求める姿が描かれています。

万は射手から受けた矢を膝に受けながらも、なおも30人を射殺し、抵抗を続けましたが、最終的には道具を失い、首を小刀で刺して自ら命を絶ちました。この行為は彼の武士としての誇りと忠義を象徴しています。

万の最期と歳月の流れ

万の死は、朝廷によって彼の死体を八つに切り、各地に晒すよう命じられました。しかし、万の飼い犬が彼の頭を咥えて古い墓に埋め、万の死を悼みました。この犬はやがて飢え死にしたと伝えられています。河内国司はこの異常な出来事を朝廷に報告し、朝廷は万の同族に命じて万と白犬の墓を作らせました。この墓は現在、岸和田市天神山町に存在しています。

例えば、万の墓として知られる2号古墳では、三条実美による顕彰碑が残されています。これらの遺跡は、万の存在を物語る貴重な文化遺産として今もなお人々に親しまれています。

伝承と文化的影響

また、万に関する伝承は、幕末から明治にかけて活躍した絵師・菊池容斎によって描かれた肖像画でも知られています。万とその白犬にまつわる逸話は『日本書紀』に記載され、その物語自体が『法華経』に由来しているとも言われています。このように、捕鳥部万の物語は日本の歴史や文化に深く根ざしており、現在もなお多くの人々に語り継がれています。

捕鳥部万の勇敢な行動とその後の伝説は、彼を単なる歴史上の人物としてだけでなく、我々の精神的な支柱として位置づける要素です。

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