捷龍1号

捷龍1号（Jielong-1 / Smart Dragon-1）

捷龍1号は、中国運載火箭技術研究院（CALT）が開発した小型衛星打ち上げ用固体燃料ロケットである。特に低コストかつ迅速な打ち上げサービス提供を目指して設計された。

性能とサイズ

このロケットは、最大で150kgのペイロード（衛星など）を高度700kmの太陽同期軌道へ投入できる能力を持つ。全長は19.5メートル、直径は1.2メートル、総重量は23.1トンと、比較的コンパクトなサイズである。

開発背景

捷龍1号は、2018年2月に開発が開始され、わずか18ヶ月という異例の短期間で完成した。この迅速な開発は、中国の弾道ミサイル開発で培われた固体燃料ロケット技術や推進技術を応用することで実現したとされる。経済性も重要な目標の一つであり、打ち上げコストは1キログラムあたり3万ドル、総額で600万ドルを目指しているとされている。

独特な構造と姿勢制御

このロケットの最も特徴的な構造は、4段目の配置にある。通常、ロケットの最終段はペイロードの真下に位置するが、捷龍1号では4段目が搭載衛星（ペイロード）よりも上、かつ逆向きに搭載されている。この構造は、開発元であるCALTによると「衛星の搭載空間を最大限に確保するため」に採用された。3段目と逆さまに配置された4段目の間に衛星を格納することで、一般的な先端部が先細りになったフェアリング内の空間ではなく、より広くて効率的な円筒形の衛星搭載空間を確保している。

この独特な構造のため、打ち上げシーケンスにも特徴がある。3段目の燃焼終了・分離後、機体は宇宙空間で180度姿勢を回転させ、その後に初めて4段目のエンジンに点火し、ペイロードを軌道に乗せる。

機体の姿勢制御についても特筆すべき点がある。1段目の飛行中は、機体後部に備え付けられた格子状のフィン、すなわちグリッドフィンを用いて空力的に制御される。一方、2段目から4段目のエンジンノズルは固定されており、これらの段での飛行中の姿勢制御は、主にサイドスラスタによって行われる。特に4段目に備えられたサイドスラスタは、加速中の精密な姿勢制御に加え、前述の180度姿勢反転を行う上で重要な役割を担っている。

発射方式と類似例

捷龍1号は、輸送起立発射機（TEL）から垂直に立ち上げられ、あたかも弾道ミサイルのように迅速に発射される方式を採用している。これは、準備期間を短縮し、多様な場所からの打ち上げを可能にすることを目的としている。

このような最終段の配置や打ち上げ中の姿勢反転という点で、ウクライナが開発したドニエプルロケットとの類似性が指摘されることがある。ドニエプルもまた180度姿勢を反転させる必要があるが、その理由は異なる。ドニエプルは元々R-36大陸間弾道ミサイルを転用したものであり、その3段目は多弾頭（MIRV）を放出する際の減速用に設計されていたため、衛星を軌道に乗せるための加速には逆向きに点火する必要があったのである。

まとめ

捷龍1号は、短期間開発、ミサイル技術応用、そしてペイロード搭載効率を追求した独特の構造を持つ、中国の新しい小型衛星打ち上げ手段として注目されている。輸送起立発射機からの迅速な発射能力と経済性も、その特徴として挙げられる。

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