推進運転

推進運転について

定義

推進運転（すいしんうんてん）とは、鉄道列車において、動力車が編成の先頭に来ず、中間または後方で列車を推進する運行形態を指します。動力車とは機関車や気動車、電動車を表し、通常は列車の先頭に配置されますが、推進運転ではその位置が異なります。また、国際的には「列車の最前部以外に連結された動力車によって操縦する運転」と定義されています。

推進運転と退行運転の違い

推進運転は、動力車が後方から前進を助けるものである一方、退行運転は通常の進行方向から反対の方向へ進む運行のことを指します。たとえば、故障や停車からの復帰時に、通常の運行と異なり後部標識側へ進む場合が退行運転となります。

推進運転が行われる理由

推進運転が実施される理由には、いくつかの背景があります。

1. 折り返し運転の都合
鉄道車両はレールから離れられないため、往復運転の場合、動力車が先頭にいると帰路では後方に位置します。これを避けるため、例えば嵯峨野観光鉄道では機回し線がなく、トロッコ亀岡行きは推進運転を利用します。
2. 急勾配のため
急勾配を上る際に、後方から動力をかけることで、より効率的に勾配を克服できる場合があります。大井川鐵道などでは、制御車から機関車をコントロールしつつ推進運転します。
3. 救援列車や排雪列車
緊急時の救援列車は、迅速な運行が求められ、推進運転が使用されます。同様に、雪を排除する排雪列車でも動力車が後方に位置することが必要で、推進運転が適用されることがあります。
4. 煙害の回避
トンネル区間を通過する際、蒸気機関車を最後尾に配置することで煙害を緩和できる例がありました。

日本における推進運転の歴史

日本では、推進運転は以前は原則禁じられていましたが、例外が多く存在しました。特に、動力分散式車両の普及とともに推進運転が不可欠な状況が増え、現在では多くの列車がこの運行形態を取っています。特に、救援列車や急勾配での運転が一般的です。

現行の推進運転の事例

最近の事例として、2023年12月現在、以下の鉄道が推進運転を行っています。

• - JR北海道：ノロッコ号にてオクハテ510が運転台を持ち、客車が先頭の場合は動力車で制御します。
• - 小湊鉄道：里山トロッコの上り列車でクハ101がDB2を操作します。
• - 大井川鐵道：井川線の下り列車ではクハ600からDD20が制御されます。
• - 嵯峨野観光鉄道：下り列車でSK200からDE10が操作されます。

海外の事例

アメリカでは、1950年代末に推進運転が導入され、特に通勤列車において一般的です。推進運転が行われることで、利便性が向上し、荷役の効率が増した事例も多く見られます。また、台湾の阿里山森林鉄路でも同様に勾配に応じて推進運転が行われています。

まとめ

推進運転は、鉄道システムにおいて重要な役割を果たす運行形態であり、特に厳しい条件下では欠かせない手法として広く受け入れられています。これにより、安全かつ効率的に運行がなされ、多くの利用者に利用されています。

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