摺手岩

摺手岩（すりでいわ）

摺手岩は、千島列島の中部に位置する重要な岩礁群で、ロシアではスレドネワ島（Острова Среднего）と呼ばれています。この地名は、ロシア語の「スレドネワ（Среднего）」が由来とされています。これは「間の」「中間の」という意味で、位置的特性を反映しています。

地理的特性

摺手岩は、宇志知島と羅処和島の中間にあり、特に摺手海峡に存在します。この岩礁群には、平岩、黒岩、海獺島、鈕岩などが含まれ、特に平岩が最大の岩となります。その形状は長径約500メートル、短径約250メートルに達し、海の上で36メートルの高さを持ちます。平岩は海底火山の頂上とされており、1880年頃に噴火した可能性も考えられていますが、詳細は不明です。

摺手岩周辺の潮流は非常に激しく、千島列島の海峡の中でも特に航行が難しい地点の一つとされています。また、岩礁が多く点在するため、海上には多くの暗礁も存在しています。これらの条件が重なり、摺手海峡はしばしば航海の危険性を高めています。

歴史

歴史的には、摺手岩にはさまざまな名称があり、明治中期の資料には「須禮吐寧波（スレトネハ）島」と記載されることもありました。さらに「摺戸岩（スレドイワ）」といった別名も現れ、ロシア名のスレドネワから日本名への変遷が見られます。宇志知島の北側に位置する島が「須禮吐寧波島」とされる資料も存在します。また、チュプカ諸島図には「カンカン・カイヘ」という表記もあり、これはアイヌ語に由来し、「大腸のように細くうねうねと白い浪が立っている」という意味を持っています。

1855年には日露通好条約によりこの地はロシア領となりましたが、1875年には樺太・千島交換条約により日本が領有権を得ます。しかし、1945年の日本の降伏後、一般命令第1号によりソ連占領地になりました。1946年にはGHQにより日本の施政権が停止された直後にソ連が領有を宣言し、1952年の日本国との平和条約において日本は領有権を放棄しましたが、ソ連はこの条約に調印していません。そのため、日本政府は千島列島の帰属について未確定と主張し続けています。1991年のソ連崩壊後はロシア連邦が実効支配を継承していますが、日本政府は依然として国際法上は帰属未定地であると考えています。

現在、摺手岩は北海道根室振興局管内の新知郡に属していた形跡がありますが、ロシア連邦によって実効支配されています。興味深いのは、摺手岩が千島列島の歴史と地理において特異な位置を占めている点であり、この地域の複雑な歴史的背景を理解するための重要な手掛かりとなっています。

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