宇志知島

宇志知島の概要

宇志知島（ウシシル島、ウシシルとう）は、千島列島の中部に位置する小さな火山島です。ロシア語ではウシシル島（o.Ушишир）、英語表記はUshishirとされています。この島の名称はアイヌ語の「ウセイ・シル」に由来し、温泉がある大地を意味します。正保御国絵図には「ウセシリ」との表記も見られ、千島アイヌにとっては神聖な場所とされています。伝説によれば、雷神カンナカムイがこの島を創造したとされています。

地理

宇志知島は、計吐夷島から約14海里の距離に位置し、北緯47度31分、東経152度48分の位置に南北2つの小島で成り立っています。全体の面積は約5平方キロメートルと非常に小さく、この地域はオホーツク海と太平洋が交わる危険な海域でもあります。南北の島は鈴木瀬戸と呼ばれる狭い海峡で繋がっており、干潮時には400メートルの幅を歩いて渡ることが可能です。

北島（リポンキチャ）は細長い三角形で、険しい海岸が特徴です。南島（ヤンキチャ）は最も広く、北部では先住民の穴居跡が確認されています。南部には直径約1キロメートルのカルデラ湾、暮田湾があり、この湾は絶景として知られています。特に、湧き出る硫黄温泉が特徴的で、砂を掘れば温泉として楽しむことも可能です。また、温泉の近くでは独特の生態系が形成されており、生命誕生の謎を解明する上でも重要な場所とされています。

生態系

宇志知島の生態系は北方系の植物が豊富で、特に海沿いの崖や洞窟では海鳥が繁殖期になると飛来してコロニーを形成します。この島に生息する生物は熱水や硫黄を元にした生命活動を行っており、生命の起源を探る上で注目されています。また、1916年には農林省により青狐が持ち込まれ、現在もその末裔が自生しています。

歴史

宇志知島は古くから人々に親しまれており、1700年頃の文献には「うせしり」の名が見られます。1769年には、探検家イワン・チョールヌイが千島アイヌの儀式を見たと記録されています。彼らはカンナカムイを特に重視し、信仰の対象としました。

1855年にはロシア領になり、1875年には日本領に戻ります。この頃には定住者はおらず、アイヌの人々が季節により島を訪れていました。しかし、1945年にソ連軍に占領され、1962年の平和条約以降、今はロシア連邦が実効支配をしています。日本政府はこの地域の帰属に関して未確定と主張し続けています。

現在の状況

宇志知島は現在も人の手が少ない自然豊かな場所であり、独特の生態系が維持されています。訪れる機会は限られていますが、その歴史や文化はアイヌの人々に深く根付いています。本島は、地理的な特性や生態系の貴重性から探検や研究の対象として注目されています。

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