播磨国風土記

播磨国風土記

『播磨国風土記』は奈良時代初期に作成され、現在の兵庫県にあたる播磨国の風土や特徴を記した古典です。特に平安時代末期に書かれた写本は、国宝に指定されています。

成立の背景

この風土記の成立は、『続日本紀』の和銅6年（713年）にさかのぼります。この時、令制国に関する詳細な報告書の作成が命じられ、そこには以下の5つのポイントが含まれました。

1. 郡や郷の名称の記録
2. 特産品としての銀、銅、染料、草木、鳥獣、虫などの図録
3. 土地の肥沃さ
4. 地名の由来
5. 古老から伝わる伝承や異事

この報告書が「風土記」と呼ばれるようになり、播磨国の国司が編纂に携わったと考えられています。特に霊亀元年（715年）頃に地方行政が変化したことから、この時期に成立した可能性が高いとされています。

伝本の歴史

『播磨国風土記』で知られる主な写本は、三条西家に伝わった平安時代末期のもの、すなわち「三条西家本」です。現在、天理大学附属天理図書館に保管されており、他の写本は存在しません。この写本の発見と研究活動は、19世紀に入ってから活発になりました。

内容の概要

『播磨国風土記』には、播磨国内の360以上の地名が記されています。郡、里、村、山、川、原、野に加え、墓や井戸、社などの名称も含まれています。特に、各地の里の名称やその由来、伝承が詳細に記載されており、地域の歴史や文化を知るための貴重な資料としての役割を果たしています。

地名の由来に関する記事には、簡潔な説明から、時代背景や登場人物まで詳細に描かれた説話的内容まで多岐にわたります。神話や皇族に絡む話も多く見受けられ、地域の文化やアイデンティティが形成される一助となっています。

官命との関連

『播磨国風土記』は、官命で求められた土地の肥沃さや地名の由来に対して忠実に応えており、詳細な評価や産物の特記も行われています。各里の肥沃さを9段階で評価し、特産物や改名の例も数多く紹介されているが、他の地域と比較すると、記述の具体性はやや異なっています。

特徴的な説話

中には、「大神の御粮がかびて酒を醸した」といった、日本最古の日本酒にまつわる逸話も含まれており、これも『播磨国風土記』の重要な要素です。また、大帯日子命と印南別嬢の恋物語や、火明命と大汝命の神話など、実際に播磨の地に関係する神々や人物の逸話が手厚く記録されています。

研究と評価

『播磨国風土記』の文体は、古代日本の特徴的な漢文と和文が混在した形式を持っており、その素朴な表現が特徴的です。これにより、地元の伝承や文化が色濃く残されているとされ、古文書研究の対象としても重要な資料となっています。また、近年の研究によって、地名の由来や伝説が地域社会の形成や文化的アイデンティティに与えた影響についても新たな視点が加えられつつあります。

このように、『播磨国風土記』は単に古い文献であるだけでなく、播磨国の歴史、文化、伝承が凝縮された重要な資料であり、古代日本の地方社会を知る上で欠かせない情報源となっています。

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