操重車

操重車とは

操重車（そうじゅうしゃ）は、鉄道車両の一種で、クレーンを搭載した作業用車両です。主に、貨物の積み下ろし、線路の保守・建設作業、事故や災害時の復旧作業などに用いられます。かつては鉄道の現場で不可欠な存在でしたが、近年は道路網の整備が進み、移動式クレーンの導入が容易になったため、活躍の機会は減少傾向にあります。

概要

操重車の主な用途は以下の3つです。

貨物取り扱い: 貨物操車場や貨物駅において、貨物の積み下ろしや移動を行います。
保線作業: 線路の敷設や保守、信号設備や分岐器の設置など、鉄道の安全運行を支えるための作業を行います。
事故復旧: 鉄道事故や災害発生時に、脱線した車両の復旧や障害物の除去などを行います。

操重車の基本的な構造は、頑丈な台枠を持つ車体に、クレーンを搭載した回転部分が載っているというものです。クレーンは、ジブと呼ばれる腕のような部分を備えており、これによって荷物を吊り上げたり、移動させたりすることができます。大型の操重車には、クレーンを操作するための操縦席も設けられています。多くの車両は、機関車によって牽引されるだけでなく、自走能力も有しており、工事現場内での移動が可能です。

ジブが車体からはみ出す長さを持つ操重車の場合、遊車と呼ばれる車両を連結し、ジブが他の車両に接触するのを防ぎます。遊車には、ジブを固定する機構や、作業に必要な特殊な装備品、補給品を積載するスペースがあります。

使用法

操重車は、その用途に応じていくつかの種類に分けることができます。

貨物扱い用操重車: 比較的小型で、主に貨物駅や操車場での貨物取り扱いに用いられます。地上設置のクレーンが届かない場所での作業に使われます。近年は、機動性に優れたクレーン車に置き換えられることが多くなっています。
保線用操重車: 線路の保守や建設作業に用いられる操重車です。信号設備の設置や分岐器の交換など、さまざまな作業に使用されます。軌道敷設など、特殊な作業に対応したタイプも存在します。
事故復旧用操重車: 最も大型の操重車で、脱線事故などの復旧作業に使用されます。脱線した車両をレールに戻すのに十分な能力を持っており、複数台のクレーンが同時に使用されることもあります。

構造

操重車は、一般的な固定式のクレーンを、強化された鉄道車両の上に搭載したものです。クレーンは360度回転することができ、線路に沿っていれば、ブームをどの方向にも向けることができます。自走可能なタイプもあり、駆動用のエンジンが搭載されています。

大型の操重車には、アウトリガーと呼ばれる脚が装備されており、クレーン作業時に展開することで安定性を確保します。アウトリガーの下には枕木が敷かれることが一般的です。

歴史

鉄道の初期には、車両が小さかったため、人力で脱線復旧作業を行うことができました。しかし、車両の大型化に伴い、より強力なクレーンが必要になりました。1890年頃から蒸気式のクレーンやケーブル・ウィンチが導入され、1910年頃にはクレーン開発がピークを迎えました。この時期の操重車は、使いやすく強力であったため、1980年代まで現役で活躍しました。

1980年代には、油圧式のディーゼルクレーンが登場し、道路を走行して事故現場に駆けつけることができるものも現れました。1990年代には、本格的な鉄道車両の台枠を備えた新世代の操重車が登場し、高速での走行が可能になりました。これらの操重車は、荷物を吊り上げたまま走行できるほか、線路の傾きを自動的に補正する機能も備えています。

製造者

操重車は、世界各国のメーカーで製造されており、主なメーカーには以下のようなものがあります。

イギリス: クラーク・チャップマン、ランサムズ・シムズ・アンド・ジェフェリーズ
アメリカ合衆国: （メーカー名記載なし）
ドイツ: キーロヴ
ロシア: KMZ, Kirov Maya 1

保存

イギリスでは、多くの保存鉄道で操重車が保存されています。中には、鉄道の運行を補助する目的で、実際に稼働できるものも存在します。アメリカでは、カリフォルニア州ポートラのウェスタン・パシフィック鉄道博物館に、複数の操重車が保存されており、そのうち2両は現在でも動作可能です。

日本の主な形式

日本でも、さまざまな形式の操重車が使用されてきました。主な形式は以下の通りです。

ソ20形: 1928年にアメリカから輸入された事故復旧用車両。
ソ30形: 1935年から製造された事故復旧用車両。当初は蒸気動力でしたが、後にディーゼル動力に換装されました。小樽市総合博物館に保存車両があります。
ソ60形: レール交換作業の効率化のために導入された車両。
ソ80形: 扱重65tの大型操重車。ソ81が三笠鉄道記念館に保存されています。
ソ200形: 橋桁架設用の車両で、扱重は35t。
ソ300形: 橋桁架設用の車両で、扱重は35t。碓氷峠鉄道文化むらに保存車両があります。
GS-80: JR東日本が導入した鉄道クレーンで、ドイツGOTTWALD社製。別名「スーパービートル」。
KRC810N: GS80の後継として導入された鉄道クレーンで、ドイツKIROW社製。
KRC1000: JR東海が導入した鉄道クレーンで、ドイツKIROW社製。
形式不詳: 昭和初期に鉄道省が導入した、木材積み下ろし用の試験車両。

まとめ

操重車は、鉄道の安全運行やメンテナンスに不可欠な車両です。その歴史は長く、技術の進歩とともに、さまざまな形式のものが開発されてきました。近年は、道路網の発達やクレーン車の普及により、活躍の機会は減っていますが、依然として鉄道の現場を支える重要な役割を担っています。

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