擬ハロゲン

擬ハロゲンの概要

擬ハロゲン（ぎハロゲン）とは、ハロゲン元素に似た性質を持つ化合物や原子団を指します。これらは一般に「Ps」という記号で表現され、その典型的な形態として二量体分子である擬ハロゲン分子Ps₂が存在します。擬ハロゲンは、化学反応においてオキシダイゼーションとリダクションを繰り返すことができるため、さまざまな化学的特性を持っています。

擬ハロゲン分子の特性

擬ハロゲン分子は、ハロゲンと同様に擬ハロゲン化物イオンPs⁻を形成し、化学反応において相互に変換されます。しかしながら、アジ化物のように、擬ハロゲン化物イオンでありながら安定した二量体分子が存在しないものもあります。一般的に、擬ハロゲンの二量体分子は揮発性が高く、その酸化力はハロゲンに比べて通常は弱いとされています。

次のような反応式が例です：

• - Ps₂ + 2 e⁻ → 2 Ps⁻ (aq)
• - (CN)₂ + 2 e⁻ → 2 CN⁻ (aq), E°= 0.375 V

また、二量体の一部は、塩基性の水溶液中で不均化反応を示すこともあります。例えば：

• - (CN)₂ + 2 OH⁻ → CN⁻ + OCN⁻ + H₂O

擬ハロゲンの種類

擬ハロゲンは、対称型と非対称型の二つのタイプに分けられます。対称型の擬ハロゲン分子には、ジシアン（(CN)₂）、チオシアン（(SCN)₂）、セレノシアン（(SeCN)₂）、およびアジドジチオ炭酸（(N₃CS₂)₂）などがあります。さらに、対称的な擬ハロゲン錯体としては、ジコバルトオクタカルボニルCo₂(CO)₈が存在し、これは仮想的なテトラカルボニルコバルトCo(CO)₄の二量体と見なされています。

非対称型擬ハロゲンの例には、ハロゲン化シアン（ClCN, BrCN, ICN）があります。また、時折塩化ニトロシル（NOCl）も擬ハロゲンとして言及されることがあります。

さらに、トリフルオロメチル基も擬ハロゲンとして知られ、たとえば、ジメチル水銀は液体の性質を持つ一方、ビス(トリフルオロメチル)水銀は水溶性の固体であり、その溶液は電導性を示します。

超原子としての擬ハロゲン

超原子であるアルミニウムのナノクラスターは、ハロゲンに似た振る舞いを示し、I₃⁻のアナログであるAl₁₃I₂⁻というイオンを形成することから、擬ハロゲンと考えられています。これは金属結合の効果に起因します。

擬ハロゲン化物の詳細

擬ハロゲン化物（ぎハロゲンかぶつ）は、擬ハロゲンが他の原子または原子団と結合した化合物であり、シアン化物、イソシアン化物、チオシアン化物などが含まれます。これらの化合物に対応するアニオンは擬ハロゲン化物イオンと呼ばれています。

錯体の擬ハロゲン化物の一例は、テトラカルボニルヒドリドコバルト(I)であるCoH(CO)₄で、この化合物はその溶解度の低さから、真のハロゲン化水素よりは弱いものの、十分な酸性を示します。

擬ハロゲン化物の化学的挙動および特性は、真のハロゲン化物と非常に似ています。内部の多重結合は擬ハロゲンの性質にほとんど影響を及ぼしません。強酸性の擬ハロゲン化水素HPsや、金属と反応して生成される擬ハロゲン化物塩MPsも存在します。

[銀]塩AgPs、[鉛]塩PbPs₂、[水銀]塩Hg₂Ps₂などは一般的に水に対して低溶解度であり、これらの柔らかい金属イオンは配位結合により錯体を形成する能力があります。

有機化合物における擬ハロゲンの役割

有機化合物中では、擬ハロゲノ基はしばしば強力な電子求引基として作用します。これは、擬ハロゲンの特性により、化学反応において重要な役割を果たすことができます。擬ハロゲンの様々な応用と特性は、化学の分野でのさらなる研究の対象となっています。

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