ジメチル水銀

ジメチル水銀について



ジメチル水銀（Dimethylmercury）は無色の液体であり、高い可燃性を持っています。この化合物の最大の特徴は、強力な神経毒である点です。わずか0.001mlの吸入でも致命的な影響を及ぼす可能性があるため、その取り扱いには特に注意が必要です。ジメチル水銀は希薄ながら甘い香りを持つとされ、その蒸気圧が高いため、漏洩した場合は迅速に危険な濃度に達することが懸念されます。

この化合物の分子は直線形であり、特にシステインとの錯体を形成する能力が高いことから、血液脳関門を容易に通過します。ジメチル水銀はその形成した錯体から非常にゆっくりと遊離するため、生物濃縮の傾向があります。これは、体内に蓄積されることで中毒の症状が暴露から数ヶ月も経ってから現れることを意味しています。このため、早期の診断と治療が難しくなるリスクがあります。

また、ジメチル水銀は材料を迅速に通過する特性があり、ラテックスやPVC、ポリイソブチレン、ネオプレンなどの通常のゴム素材を簡単に透過します。したがって、ほとんどのゴム手袋はジメチル水銀に対して十分な防護を提供できません。安全な取り扱いのためには、強力にラミネート加工された手袋を使用し、長い折り返しのついたネオプレン手袋の下に装着することが推奨されます。また、作業環境では換気フードを使用し、顔を守るシールドを装着することも重要です。

1996年、アメリカのダートマス大学で化学教授のカレン・ヴェッターハーンがラテックス手袋に数滴のジメチル水銀をこぼしたことで被曝しました。彼女は5ヶ月後に水銀中毒の症状を示し、その後の治療にも関わらず更に5ヶ月後に亡くなりました。この事件はジメチル水銀の毒性について広く注目されるきっかけとなりました。

使用


ジメチル水銀は、その毒性の高さから、毒物学実験の基準として利用されることが多いです。しかし、毒性の低い水銀化合物の方が優先されることが一般的ですが、ある特定の場面では水銀の検出を行うNMR器具の調整用に使用されることもあります。これにより、研究や実験において重要な役割を果たしています。

参考文献



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