改税約書

改税約書（かいぜいやくしょ）は、安政五カ国条約付属貿易章程を改訂するために締結された協約であり、江戸協約とも呼ばれています。

調印の経緯と内容

1858年（安政5年）以降、江戸幕府は朝廷や諸大名の意向を無視し、欧米諸国と次々に安政五カ国条約（安政の仮条約）を締結しました。しかし、この条約締結は、幕府自身の問題を引き起こし、国内を混乱させる事態を招きました。具体的には、朝廷の許可を得ずに条約を結んだこと（違勅）、関税自主権を放棄したことによる物価高騰や品不足、領事裁判権の設定による不当な被害、鎖国政策との矛盾、開港を強引に進めたことによる幕府の信頼失墜などが挙げられます。

これらの問題により、幕府は当初の開港期限（1863年1月1日）を5年間延長せざるを得なくなり、新たな開港期限を1868年1月1日としました。しかし、開港には、その6ヶ月前に布告する必要があり、欧米列強は、6ヶ月前の布告では遅すぎるとして、幕府を通して天皇・朝廷に早期の開港布告を求めていました。

このような状況下で、改税約書は、開港期限が迫る中で兵庫港沖に集結した欧米列強の要求と軍事的な圧力によって、1866年6月25日（慶応2年5月13日）に江戸幕府の老中水野忠精とイギリス、アメリカ、フランス、オランダの4カ国代表との間で締結されました。イギリス公使パークスを中心とする列強側は、財政難に苦しむ江戸幕府が支払いに困窮していた下関戦争の賠償金総額の3分の2を減免することを条件に、条約の勅許、兵庫の早期開港、関税率の低減を要求しました。

この結果、輸入品価格の35％ないし5％をかける従価税方式であった関税が、過去4年間の物価平均で定まる原価の一律5％を基準とする従量税方式へと改められました。この関税制度の変更は、関税自主権を放棄したことによって既に物価が高騰していた日本国内に、さらに安価な外国製品が大量に流入することを招き、貿易収支の不均衡を悪化させました。また、日本の産業資本の発達を著しく阻害しただけでなく、高価格の外国製品の輸入を促進し、国内経済に大きな打撃を与えました。

改税約書は、1894年（明治27年）に廃棄されましたが、その影響は日本の経済や社会に深く刻まれました。

関連項目

関税自主権

参考文献

田中時彦「条約改正」小学館編『日本大百科全書』小学館（スーパーニッポニカProfessional　Win版）、2004年2月。ISBN 4099067459

外部リンク

* 『改税約書』（城新作『日英新条約義解 : 英文並現行諸条約参照』、鳳林館） - 国会図書館デジタルコレクション

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