放生会 (椎名林檎のアルバム)

椎名林檎 7thアルバム『放生会』

シンガーソングライター椎名林檎が、2024年5月29日に7枚目のオリジナルアルバム『放生会』をリリースしました。前作『三毒史』から約5年ぶりとなる本作は、デビュー26周年という記念すべき日に発表され、大きな話題を呼びました。

アルバム概要

本作は、椎名林檎が「三毒史」で試みた男性ボーカルとのデュエットという手法をさらに発展させ、宇多田ヒカル、AI、のっち（Perfume）、もも（チャラン・ポ・ランタン）、Daoko、新しい学校のリーダーズ、中嶋イッキュウ（tricot、ジェニーハイ）といった、彼女がデビュー前から一人のリスナーとして触れてきた7人の女性アーティストをフィーチャーした点が大きな特徴です。これらのゲストアーティストとの共演曲を含む新曲7曲に加え、2019年から2024年までに発表されたシングル収録曲6曲の全13曲が収録されています。

椎名は、オフィシャルライナーノーツで「『三毒史』では異性、しかも自分にとって先輩にあたる方とデュエットしましたが、『放生会』では自分より若い世代の方に奔放に表現していただくことを意識した」と語っています。また、アルバムタイトルに採用した「放生会」という言葉は、捕獲した生き物を野に放つ宗教儀式に由来し、椎名は「あらゆるものを手放さずに生きる人々を描きたかった」と説明しています。

プロモーション

アルバム発表日には、共演楽曲7曲の先行配信がスタートし、翌日にはミュージックビデオが公開されました。ミュージックビデオは全て児玉裕一が監督を務め、各アーティストの個性を引き出しています。また、発売日にはYouTubeのライブ配信で、椎名、Daoko、中嶋イッキュウ、ももが参加する「スナックきまぐれ～リモート営業中～」が配信され、ファンを楽しませました。

収録曲と楽曲解説

1. ちりぬるを（offering sake）：椎名林檎と中嶋イッキュウによる楽曲。椎名は、弔いの場で使われる忌み言葉をあえて使用し、中嶋イッキュウの清潔さ、神秘性を借りることでグロテスクにならないように表現したと語っています。
2. 私は猫の目 album ver.（i'm free）：2023年リリースのシングルの新約版。管弦を取り入れたアレンジで、キーもシングル版より高く設定されています。外国語タイトルもフランス語から英語に変更。
3. 生者の行進（a procession of the living）：椎名林檎とAIの楽曲。椎名はAIの持つ母性と野性のイメージを基に楽曲を書き下ろしたと語っています。
4. 人間として（as a human）：2024年リリースのシングル表題曲。
5. 初KO勝ち（1RKO）：椎名林檎とのっちによる楽曲。椎名は長年のラブコールが実り、念願のコラボが実現した喜びを語っています。
6. 公然の秘密 album ver.（open secret）：ベストアルバム収録曲のアルバムバージョン。
7. 浪漫と算盤 TYO album ver.（the sun & moon）：椎名林檎と宇多田ヒカルの楽曲。アルバムの中心に配置することで、この楽曲の意義を伝えたいと椎名は語っています。
8. 茫然も自失（closed truth）：全編スペイン語の歌詞が特徴。
9. ドラ1独走（FRDP）：椎名林檎と新しい学校のリーダーズの楽曲。バンドのボーカリストとしてSUZUKAの魅力を引き出すことを意識したと語られています。
10. さらば純情 album ver.（bye purity）：2023年リリースのシングルカップリング曲の新約版。打ち込み主体から管弦中心の構成へ変更、外国語タイトルもフランス語から英語に変更されています。
11. 余裕の凱旋（a grand triumphant return）：椎名林檎とDaokoの楽曲。Daokoの力の抜けた側面を記録したと椎名は語っています。
12. いとをかし album ver.（toogood）：配信限定シングルの新約版。ウッドベースとアコーディオンが追加されています。
13. ほぼ水の泡（cheers beer）：椎名林檎とももの楽曲。ももの度胸と諦観に憧れて書いたと椎名は語っています。

楽曲クレジット

全作詞・作曲・編曲：椎名林檎（注記を除く）

演奏

all programming：椎名林檎
all guitar & sitar：名越由貴夫
all wood & electric bass：鳥越啓介
all drums & percussion：石若駿

評価

本作は、オリコンランキングで初登場1位を獲得するなど、大きな成功を収めました。

まとめ

『放生会』は、椎名林檎の音楽的探求心と、彼女が敬愛するアーティストたちとのコラボレーションが結実した意欲作です。過去の作品からの新約版、新曲ともに、彼女の表現力の高さと音楽性の深さを感じることができます。

もう一度検索