放蕩息子たちの出発と帰還

ジャン＝リュック・ゴダール監督による短編映画『放蕩息子たちの出発と帰還』（原題：L'Aller et retour des enfants prodigues）は、1967年に制作され、オムニバス映画『愛と怒り』（原題：L'amore）の一篇として1969年に公開されました。

『愛と怒り』は、当初『福音書'70』というタイトルで、1967年11月24日にロンドン映画祭で初上映されました。その後、1969年7月5日にはベルリン国際映画祭でも上映され、フランスでは『論争』（La Contestation）というタイトルで1970年6月3日に公開されています。イタリアでの公開タイトルは「Andate e ritorno dei figli prodighi」で、邦題はこのイタリア語タイトルからの直訳です。

本作は、ミシェル・ロジエのルーフガーデンを舞台に、アラン・ルヴァンとアルマン・マルコによる撮影によって実現しました。ゴダール監督にとって、この二人は『ベトナムから遠く離れて』に収録されている『カメラ・アイ』に続いての撮影担当となります。

物語は、クリスティーヌ・ゲオとニーノ・カステルヌオーヴォ演じる若いカップルを中心に展開します。二人はルーフガーデンでリラックスした時間を過ごしており、彼女がフランス語、彼がイタリア語を話すという設定が興味深い対比を生み出しています。

彼らの会話は、単なる恋愛模様にとどまらず、戦争や革命、社会の搾取といった、当時の若者たちが直面していた重いテーマへと発展していきます。この会話を通して、ゴダール監督は社会への鋭い批評性を表現しています。

ゴダール作品の特徴である実験的な映像表現も、本作においては顕著です。具体的な映像例は資料不足のため記載できませんが、ゴダール監督特有の視点と技法が用いられていることは想像に難くありません。例えば、カメラワークや編集手法、色彩、そして登場人物のセリフや行動一つ一つに、社会へのメッセージが込められていると考えられます。

キャストは、クリスティーヌ・ゲオ、ニーノ・カステルヌオーヴォの他に、カトリーヌ・ジュールダンとパオロ・ポゼッシが参加しています。それぞれの俳優が、ゴダール監督の意図を的確に表現していることは間違いありません。

スタッフには、撮影のアラン・ルヴァン、アルマン・マルコに加え、録音のアントワーヌ・ボンファンティ、ギイ・ヴィレット、編集のアニエス・ギュモ、デルフィーヌ・デフォンなど、多くの才能が結集しています。監督・脚本はジャン＝リュック・ゴダール自身です。

『放蕩息子たちの出発と帰還』は、短い尺ながら、ゴダール監督の社会性と実験性を凝縮した作品であり、彼の初期作品を知る上で重要な一作と言えるでしょう。60年代後半の社会情勢や、ゴダール監督の思想を知る上で、非常に興味深い作品です。また、美しいルーフガーデンでの撮影も、本作の魅力の一つです。興味のある方は、ぜひ一度鑑賞することをお勧めします。

テクニカルデータとしては、テクニスコープ、コダックイーストマンカラー、35ミリフィルムが使用されています。

もう一度検索