カメラ・アイ

ジャン＝リュック・ゴダール監督による短編映画『カメラ・アイ』(Camera-Eye)は、1967年に製作された作品であり、反戦を訴えるオムニバス映画『ベトナムから遠く離れて』に収録されています。フランス語題は『Caméra Œil』です。

本作は、ゴダールとドキュメンタリー映画作家クリス・マルケルの緊密な関係から生まれました。二人はその後も『メドヴドキン集団』の設立や『シネトラクト』シリーズの製作など、共同で活動しています。

『カメラ・アイ』でゴダールは自らも出演し、ベトナムへの渡航が叶わず、構想を断念せざるを得なかった自身の経験を語ります。ミッチェル撮影機を覗き込みながら、ベトナム侵略の停止と、逆に自分たちがベトナムに侵略されるべきだと主張する彼の言葉は、戦争の非対称性に対する痛烈な批判です。

この対称性の回復を求めるゴダールの思想は、彼の後の作品にも通底しています。『ヒア＆ゼア こことよそ』ではパレスチナとパリを並列させ、『アワーミュージック』ではサラエヴォの非対称戦争を独自の視点で捉え直そうとしています。これは『カメラ・アイ』で既に示されていた彼の重要なテーマと言えます。

撮影はアラン・ルヴァンとアルマン・マルコが担当しました。ルヴァンはアニエス・ヴァルダ監督の『5時から7時までのクレオ』や他のフランス映画でもカメラマンを務めており、マルコは翌1968年にゴダールらが結成した「ジガ・ヴェルトフ集団」にも参加しています。二人の手腕が、本作の映像に深みを与えていると言えるでしょう。

『ベトナムから遠く離れて』は1967年夏に完成し、同年8月27日、モントリオール世界映画祭で初上映されました。この作品は大きな反響を呼び、ゴダール監督の反戦思想を世界に知らしめるきっかけとなりました。

スタッフは監督・脚本・出演にゴダール自身、撮影監督にルヴァンとマルコ、録音にアントワーヌ・ボンファンティ、編集にラニャール、ジャクリーヌ・メピエル、そしてクリス・マルケルと、才能あるスタッフ陣によって支えられています。助監督はシャルル・L・ビッチ、音楽はミシェル・ファーノが担当、プロデューサーはゴダールとマルケルが共同で務めました。製作はSLON（ソシエテ・プール・ル・ランスマン・デ・ズーヴル・ヌーヴェル）社、撮影はコダックイーストマンカラーの16ミリフィルムで行われました。

『カメラ・アイ』は、ベトナム戦争に対するゴダールの批判的視点と、彼の映画における実験的な試み、そしてマルケルとのコラボレーションという重要な要素が凝縮された作品です。ゴダール監督作品、ひいては当時のフランス映画史における重要な作品として、高い評価を得ています。 また、本作はゴダールのその後の創作活動の方向性を知る上で非常に重要な手がかりを与えてくれる作品となっています。この短編映画を通して、彼の反戦思想、映画表現への探求、そして協働への姿勢を垣間見ることができるでしょう。

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