放電灯

放電灯の種類と特徴

放電灯とは、電極間の放電現象を利用して発光する照明器具の総称です。アーク灯を含めた広義の定義と、アーク灯を別分類とする狭義の定義があります。

アーク灯との違い

アーク灯、例えば炭素アーク灯は、2本の炭素電極間にアーク放電を起こし発光します。放電灯と共通する陰極降下、力率の低下、安定抵抗の必要性などの性質を持ちますが、管長が短く電流が大きいため、一般的に放電灯とは区別されます。

炭素アーク灯：電灯の起源

1808年、ハンフリー・デービーによる発明が電灯の始まりです。2本の炭素棒電極間の放電で発生した炭素蒸気が白熱発光する仕組みです。当初は電源や電極間隔の調整に課題がありましたが、1862年にはイギリスのダンジネス灯台で実用化されました。

19世紀後半には街路灯として広く用いられ、1878年のパリ万国博覧会ではヤブロチコフの電気ろうそく（炭素棒を並列配置し、電極間隔調整を不要にしたアーク灯）が注目を集めました。しかし、強烈な光と騒音から、屋内照明には不向きでした。日本でも明治初期から導入され、銀座の街路灯として話題となりました。歌川重清の錦絵『東京銀座通電氣燈建設之圖』には当時の様子が描かれています。

アーク灯の強烈な光と紫外線は、後に発明された白熱電球にとって代わられる要因となりました。白熱電球はフィラメントの発熱による発光を利用し、アーク灯よりも穏やかな光を提供しました。

高圧放電灯：HIDランプ

高圧放電灯は、封入ガスや金属の種類によって様々な種類があります。1970年頃からはHIDランプ（High-Intensity Discharge lamp、高輝度放電ランプ）とも呼ばれるようになりました。主な種類は以下の通りです。

水銀灯: 水銀蒸気の放電発光を利用。蒸気圧によって発光スペクトルが変化し、高圧水銀灯は高効率です。低圧水銀灯は現在ではあまり使用されていません。
メタルハライド灯: 水銀、アルゴンなどの不活性ガス、そして発光物質のハロゲン化物を封入。高圧水銀灯よりも始動電圧が高いのが特徴です。
高圧ナトリウム灯: 約0.1気圧のナトリウム蒸気を封入。1万2000時間の長寿命と高い光束維持率（約90%）が特徴です。
キセノンランプ: キセノンガスを用いた高圧放電灯。

低圧放電灯

低圧放電灯には、以下の種類があります。

蛍光灯: 熱陰極型と冷陰極型があり、代表的な低圧放電灯です。水銀蒸気と蛍光体を利用し、効率の良い発光を実現しています。
低圧ナトリウム灯: U字型の管にナトリウムとアルゴンを封入。単色光で、高い発光効率を誇ります。
* 希ガス放電ランプ: ネオンランプなどが含まれ、希ガス（アルゴン、ネオンなど）の放電発光を利用します。

放電灯は、その種類によって発光効率、寿命、光の性質などが異なります。用途に応じて適切な放電灯を選択することが重要です。 それぞれの用途、特徴を理解することで、より効果的な照明環境を構築することができます。

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