政治学 (アリストテレス)

アリストテレスの『政治学』

『政治学』とは、古代ギリシャの哲学者アリストテレスによって書かれた政治に関する重要な著作であり、政治学と政治哲学における古典の中の古典とされています。アリストテレスはアテナイでプラトンの弟子として学び、その後マケドニアでアレクサンドロス大王の教育に従事したことでも知られています。彼は学問の世界に戻り、リュケイオンという学園を設立して教育と研究を行いました。

この『政治学』は、全8巻から構成されており、理想的な国家についての考察から実際の国家体制の分析、さらには教育制度に至るまで、幅広く深い内容が含まれています。アリストテレスがこの作品をいつ、どのように執筆したのかは不明ですが、彼の考えが様々な時期にわたり整理され編集されたものと考えられます。

全体の構成

1. 第1巻（国家の定義・共同体性） では、国家の概念や共同体としての役割が13章にわたり説明されています。ここでは、国家が最高の共同体であること、その目的は最高の善であることが強調されています。各構成員の役割や徳についても詳述されています。

2. 第2巻（既成の国家論・優良国家の検討） では、理論的に最善の国家について考察がされ、プラトンの国家論に対する批判が展開されています。この巻では、実在する国家と理論上の理想の国家を比較し、教育の重要性も述べられています。

3. 第3巻（国家の部分、国制の分類） では、国民の構成や徳について議論されており、国制の分類が行われています。統治者の数と目的を基に、様々な国制が定義されています。

4. 第4巻（種々の現実の国制） では、現存する国家における実際の国制について分析が行われており、国家の多様性やその原因について考察されています。

5. 第5巻（国制の変革） では、国制の変革に関する一般的原因や、それに対する対策が論じられており、民主制から寡頭制への変革など具体的な事例が挙げられています。

6. 第6巻（民主制・寡頭制の維持） では、各々の国制を維持するための方法が検討され、その際の問題点や解決策についても述べられています。

7. 第7巻（国家の善と教育1） では、幸福の概念や最善の国家に必要な教育システムについて論じられており、良き市民を育成するための教育方針が示されています。

8. 第8巻（国家の善と教育2） では、実際にどのような教育方針が有効であるか、特に音楽や体操の役割に焦点が当たっています。

アリストテレスは、外的な社会構造や経済的な背景にも目を向けつつ、国家を単なる権力の象徴としてではなく、その本質的な目的を追求する共同体として定義しました。特に彼の「ポリス的動物」という考え方は、人間が社会でどう生きるべきか、またそのためにどのような制度が不可欠であるかという深遠な問いに導いています。

このように、『政治学』は単に理論を提示するだけでなく、実際の社会や政治に対する洞察を提供し、現代においてもなお研究と議論の対象となっています。アリストテレスのこの著作は、政治、倫理、社会学における古典的な知恵の宝庫として、その価値を今も変わらず持っています。

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