救貧院 (ワークハウス)

ワークハウスの歴史と役割

ワークハウス（Workhouse）は、特にイングランドとウェールズにおいて、生活が困難な人々が収容され、労働を提供される施設です。この施設は、貧困層の支援のための制度として発展してきました。一般的には「スパイク（Spike）」とも呼ばれ、1620年代からの記録が残っています。その起源は、1388年の救貧法にまでさかのぼり、労働者の移動を制限し国が貧困支援の責任を持つ制度が確立されました。

厚生制度の変遷

ワークハウスの運営は、社会情勢や経済の動向に大きく左右されました。特に、ナポレオン戦争後の1830年代には失業者が増加したため、既存の救貧制度では対応しきれないという認識が広まり、1834年に新しい救貧法が制定されました。この法律は、救援を求める人々に対してワークハウスへの収容を強いるもので、小規模な救援を排除する方向に進展しました。

その後、収容者の労働力を活用してワークハウスを運営する試みが行われましたが、彼らの多くは自由市場で働くことへの意欲もなく、任される作業は労働集約的で、労働条件も厳しいものでした。たとえば、石を割ったり、肥料を作るために骨を砕く作業、さらには金属の爪を用いて縄をほどく作業などがありました。

社会的背景と改革の必要性

1832年までに救貧制度のコストが急増し、貧困層が増加する中で政府の調査が行われ、1834年の新救貧法に基づく中央集権化が進みました。この法律により、収容者は年齢や健康状態によって分類され、治療が本当に必要な人々を優先する方針が示されました。それ以降、ワークハウスは急増し、各地に広まったものの、多くの場合で労働者からの反発や抵抗が見られました。

ヴィクトリア朝時代のワークハウス

ヴィクトリア朝初期のワークハウスは「貧困者の監獄」とも呼ばれ、厳しい規則と管理のもとで運営されました。中央で囲まれた広場を中心に、住まう人々は厳格な分類と制限のもとに生活していました。新しい施設は、ジェレミ・ベンサムが提唱したパノプティコンに基づいて設計され、様々な収容者が労働と運動を行えるような環境が整えられました。

収容者の労働とその状況

ワークハウス内での仕事は、収容者に対して労働を通じて自立を促すものと考えられていましたが、実情は厳しく、収入がワークハウスの運営コストをカバーすることはほとんど不可能でした。多くの収容者が任される業務は、精神的・身体的に厳しいもので、1845年には、腐敗した骨を巡るスキャンダルが発覚し、それが社会問題となりました。その結果、より人道的な処遇を求める声も高まりました。

ワークハウスの廃止とその後

1905年には、ワークハウスの制度自体が見直され、異なる分類の収容者を扱う専用の施設が設立されるべきだとされましたが、実際の廃止は1930年の地方自治法施行後まで続きました。ワークハウスは生活保護施設や医療機関に転用され、1948年の国民扶助法施行時にその役割を完全に終えました。

このように、ワークハウスは長きにわたり社会における貧困問題の一端を担っていましたが、その制度は時代とともに変化し、最終的には現代の社会福祉制度に引き継がれていくこととなりました。

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