教授と美女

1941年、スクリューボール・コメディの傑作『教授と美女』

『教授と美女』（原題：Ball of Fire）は、1941年に公開されたアメリカ合衆国の映画です。ゲイリー・クーパーとバーバラ・スタンウィックというハリウッドを代表するスターの共演により、軽快なテンポとウィットに富んだ会話、そして予想外の展開が魅力的な、正統派スクリューボール・コメディに仕上がっています。

ニューヨークの館で繰り広げられる、学究と俗世の出会いの物語

物語は、ニューヨークにある財団が所有する館で百科事典の編纂に励む8人の教授たちの生活から始まります。彼らは長年、世間の喧騒を離れて研究に没頭しており、百科事典完成まであと3年を要する状況です。ある日、館に迷い込んだ陽気なゴミ収集人がラジオクイズの答えを求めて訪れ、教授たちが知らない現代の俗語を連発します。

この出来事をきっかけに、言語学教授のバートラム・ポッツは、時代に取り残されないようスラングの調査を始めることになります。ナイトクラブで出会ったバーレスクダンサー、シュガーパス・オーシェイは、世間の知識に長け、魅力的な女性です。彼女は、警察の追手から逃れるため、教授たちの館に身を寄せます。

学究とバーレスクダンサーのロマンス

シュガーパスは、教授たちにコンガのダンスを教えたり、俗語の意味を実演してみせたりと、館の生活に活気を与えていきます。特にポッツは、シュガーパスに惹かれ、百科事典編纂どころではなくなってしまいます。二人は互いに惹かれ合い、結婚を決意するまでに至りますが、その過程には様々なハプニングが待ち受けています。

ホテルでの宿泊中に、ドアの番号が入れ替わるというコミカルな出来事や、シュガーパスの恋人であるギャングのボス、ジョー・ライラックの策略など、予想外の展開が物語を盛り上げます。クライマックスでは、教授たち全員が人質に取られるという事態に陥りますが、知略を巡らせて見事な逆転劇を演じます。

豪華キャストと洗練された演出

本作は、ゲイリー・クーパーとバーバラ・スタンウィックの他に、オスカー・ホモルカ、ヘンリー・トラヴァース、S・Z・サカールなど実力派俳優が多数出演しており、彼らの個性的な演技が物語に深みを与えています。監督は、後に名匠と呼ばれることになるハワード・ホークスが担当。彼の演出手腕により、テンポの良い展開と、笑いとロマンスのバランスが絶妙に取れた作品に仕上がっています。

製作秘話と評価

本作は当初、異なるタイトルやキャストが検討されました。主演女優候補にはジンジャー・ロジャースやジーン・アーサーの名前も挙がっていましたが、最終的にバーバラ・スタンウィックが抜擢され、彼女の演技は高く評価され、アカデミー賞候補にもノミネートされました。撮影中には、スタンウィックが共演者にケガを負わせるというハプニングもありましたが、これらのエピソードも本作の魅力を高める要素の一つとなっています。

公開時は大ヒットを記録し、批評家からも高い評価を得ました。現在でも、ロッテン・トマトでは100%という驚異的な評価を獲得しています。また、AFIアメリカ映画100年シリーズにも選出されており、アメリカ映画史に残る名作として広く認識されています。1948年には、『ヒット・パレード』としてリメイクされましたが、オリジナル版の人気を超えることはできませんでした。

『教授と美女』は、軽妙な笑いとスリリングな展開、そして魅力的なキャラクターたちが織りなす、忘れられない傑作です。

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