アトロピン

アトロピンについての詳細

アトロピンは、その化学組成が C17H23NO3 というアルカロイドであり、ヒヨスチアミンのラセミ体として知られています。この化合物は主にナス科の植物から抽出され、特にチョウセンアサガオやハシリドコロが有名です。アトロピンはトロパン骨格を持ち、オルニチンから生合成されます。医薬品分野においては、主に徐脈性不整脈の治療に使用され、緊急時には有機リン剤中毒や神経ガス曝露の際にも利用されます。

抗コリン作用

アトロピンは抗コリン薬として、ムスカリン性アセチルコリン受容体を競合的に阻害します。これにより、副交感神経の活動が抑制され、結果として胃腸管の運動が抑制されたり、心拍数が増加することがあります。また、アトロピンは有機リン剤中毒に際しても効果的であり、特に1995年の地下鉄サリン事件では、サリンに曝露された被害者に対して使用されました。

アメリカ軍では神経ガスの曝露に備え、アトロピン注射が指導されており、簡易マニュアルが配布されています。湾岸戦争では、イラクによる化学兵器の使用に備え、イスラエルで国民にアトロピンの注射キットが配布されました。

医薬品としての形態

医薬品形態としてのアトロピンは通常、硫酸アトロピンとして使用されます。この薬剤は無色または白色の結晶性の粉末で、特に酢酸やエタノールに非常に溶けやすい特性を持ちながら、ジエチルエーテルにはほとんど溶けません。融点は188〜194℃とされています。

使用の適応

アトロピンの注射液は、以下の状況で使用されます：

• - 胃と十二指腸の潰瘍に伴う分泌と運動の亢進
• - 胃腸の痙攣性疼痛、胆管・尿管の疝痛、痙攣性便秘
• - 迷走神経由来の徐脈や房室ブロック
• - 麻酔前の投薬
• - 有機リン剤などの中毒状態
• - 重症筋無力症によるコリン作動性クリーゼの治療

点眼液としては、散瞳や調節麻痺の目的で使用されることもあります。

アトロピンを含む植物

アトロピンは, 主にヒヨスチアミンとしてナス科の植物に自然に存在します。特に、以下の植物には多量に含まれています：

• - ハシリドコロ
• - ベラドンナ
• - チョウセンアサガオ
• - ヨウシュチョウセンアサガオ

これらを摂取すると、中毒の危険があるため注意が必要です。

フィクションにおけるアトロピン

アトロピンは、さまざまなフィクション作品に登場します。和久峻三の小説『赤かぶ検事シリーズ』では、アトロピンの過使用により、キャラクターが死亡する場面があります。また、アメリカのドラマ『24 -TWENTY FOUR-』では、神経ガスからの救助の際にアトロピンが使用されています。その他、映画『ザ・ロック』やアガサ・クリスティの小説etc.でもアトロピンが重要な役割を果たす場面が見受けられます。

結論

アトロピンは、医療現場においてさまざまな用途がある重要な化合物です。その特性や効果を理解し、適切な使用が求められます。

もう一度検索