敬順王

敬順王（けいじゅんおう）について

敬順王とは、新羅の第56代国王であり、在位期間は927年から935年でした。彼は最後の新羅王として知られ、姓は金、諱は傅です。また、彼は第46代国王文聖王の6世孫にあたります。敬順王の治世には、新羅は多くの困難に直面し、彼の決断が国の未来を大きく左右しました。

生涯と治世

敬順王は927年、後百済の王であった甄萱によって、王位に就けられました。この時、先代の景哀王が甄萱によって殺害されたため、敬順王は急遽王位に就くこととなりました。しかし、彼が即位した当初から、新羅は各地で群雄割拠が続き、国土は次第に縮小していきました。

931年から933年にかけての混乱した時期、新羅の国権と安定を図るために、敬順王は困難な決断を下しました。935年には高麗に降伏することを決定し、この際に自身の妹を高麗の王・太祖に嫁がせました。これにより、敬順王は国土の保全を図り、さらなる戦乱を回避しようとしました。

しかし、敬順王の降伏には彼の太子が強く反対しました。太子は金剛山に逃れ、そこに一生を過ごすことになります。金剛山では麻の衣を着て、草食生活を送っていたとのことです。このため、彼は「麻衣太子」と呼ばれ、国の未来について想いを馳せ続けました。

敬順王の四男は後に安東金氏として貴族の地位を得、家系からは高麗の将軍も輩出されました。家族の運命は、国の混乱と敗北の中でも一定の名声を保つものとなりました。

敬順王と高麗の関係

高麗の太祖王建は、敬順王に長女の楽浪公主を嫁がせました。敬順王は自らの愛娘を高麗の王に送り出す際、彼女の称号を神鸞公主と改名するよう求めました。また、楽浪公主の諡号は安貞淑儀公主です。これによって、敬順王の家族は高麗の王朝において特別な地位を築くこととなりました。

さらに、高麗の太祖は敬順王に慶州を食邑として与え、事審官に任命しました。のちに、高麗第5代王の景宗も敬順王の娘を妃としています。こうした繋がりは、単に個人の結婚に留まらず、両国の政治的な関係にも影響を与えることになりました。

影響と遺産

敬順王の治世は、彼が降伏を選んだことで新羅の歴史に一大転機をもたらしました。新羅としての権力は失われたものの、彼の家族は今後の高麗においても重要な役割を果たし続けました。このように、敬順王の時代は、新羅の最後を象徴する出来事だけでなく、その後の高麗の発展にも繋がる重要な背景を形成しました。

参考文献

『アジア人物史 3』 集英社 2023年

もう一度検索