整理信託公社

整理信託公社（Resolution Trust Corporation, RTC）は、1980年代後半から1990年代初頭にかけてアメリカ合衆国で発生したS&L（貯蓄貸付組合）危機に対処するために、一時的に設立された政府機関です。S&L危機の深刻化に伴い、多数のS&Lが破綻し、預金保険公社（Savings and Loan Insurance Corporation, SLIC）も破綻の危機に瀕しました。この状況を打開するために、連邦預金保険公社（Federal Deposit Insurance Corporation, FDIC）から人材を招き、RTCが設立されました。

RTCの主な役割は、破綻したS&Lの資産を管理・処分することでした。具体的には、預金者に対する払い戻しを行う一方で、不良債権や不動産などの資産を保全し、可能な限り高値で売却することを目指しました。この際、RTCは従来の資産売却手法に加え、証券化を活用するなど、様々な手法を駆使しました。

従来の資産売却では、資産をまとめて売却する「バルクセール」が一般的でしたが、RTCはこれに加えて、不良債権の管理・回収を民間の債権回収会社に委託したり、投資会社などと提携して企業再生手法を活用するなど、より多様なアプローチを試みました。これらの取り組みは、単に資産を処分するだけでなく、その価値を最大限に引き出すことを目指したものでした。

RTCは、1989年の設立から1995年にその役割を終え、連邦預金保険公社（FDIC）に業務を引き継ぎました。この期間中に、RTCは引き受けた資産の8割以上を回収したとされています。この実績は、その後の金融危機における資産管理会社のモデルとなり、世界各国の金融破綻処理に大きな影響を与えました。

特に日本においては、1990年代後半に発生した金融危機の際、RTCの設立と運営が参考にされ、整理回収機構（RCC）が設立されました。整理回収機構は、設立過程で「日本版RTC」と呼ばれていました。また、現在の英語略称もRTCに類似したRCC（Resolution and Collection Corporation）となっています。このように、RTCはアメリカにおけるS&L危機対応だけでなく、国際的な金融破綻処理の歴史においても重要な役割を果たしました。

参考資料
* 世界経済の潮流 2003年春 /内閣府

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