整理整頓コメディー 「わたしのウチにはなんにもない。」

『わたしのウチには、なんにもない。』は、イラストレーターのゆるりまい氏が手がける人気のコミックエッセイシリーズです。本作は、著者が自身のブログで写真と文章を交えて紹介していた、極限まで物が少ない自宅の様子が大きな話題となったことから生まれました。その空間は、まるでモデルルームのように何も置かれていないかのように見え、多くの読者に衝撃と共感を与えました。

ブログでの反響をきっかけに、著者は物を極限まで減らす「捨てたい病」を発症し、徹底的な断捨離を実践する過程を描き始めます。この、かつては物が散乱した「汚部屋」に住んでいた著者が、どのようにして「なんにもない」暮らしを追求するようになったのか、その道のりと、それに伴う著者自身や家族との間で繰り広げられる様々なエピソードが、ユーモアを交えながらもリアルに描かれているのが本作の大きな魅力です。

書籍シリーズ

シリーズの第1作となる『わたしのウチには、なんにもない。 「物を捨てたい病」を発症し、今現在に至ります』は、2013年2月にエンターブレインより刊行されました。以降、『なくても暮していけるんです』、『モノとの上手なつき合いかた』、『はじめての遺品整理。さすがのわたしも辛かった・・・』といった続刊が順次発表され、2015年にはシリーズ累計発行部数が20万部を突破するなど、片付けや断捨離、ミニマルな暮らしに関心を持つ人々の間で広く読まれるベストセラーシリーズとなりました。2016年には、これまでの内容をまとめた『4コマ総集編』もKADOKAWAから刊行されています。

テレビドラマ化

この人気を受け、『わたしのウチには、なんにもない。』はテレビドラマ化も実現しました。整理整頓コメディー『わたしのウチには、なんにもない。』と題され、2016年2月6日から3月12日にかけて、NHK BSプレミアムにて毎週土曜日の夜に放送されました。主演は夏帆さんが務め、全6話で構成されています。

ドラマ版は、原作コミックエッセイの世界観をベースにしつつ、単なる物語にとどまらず、整理整頓や収納に関する practical なノウハウも随所に盛り込まれた、情報番組としての側面も併せ持つユニークなシチュエーション・コメディとして制作されました。CMディレクター出身の有働佳史氏が演出を手がけ、その斬新な映像表現も話題となりました。

ドラマは複数の要素で構成されていました。中心となるのは、主人公まい（夏帆）が、徹底的な断捨離を進める中で家族や周囲と向き合う日常を描く本編エピソードです。各話で複数のエピソードが展開され、通し番号と副題がつけられています。これに加えて、まいの友人である菊池（趣里）と後輩の真美（大久保聡美）が喫茶店で片付けについて語り合うミニドラマ「菊池と真美のティータイム」や、猫型ロボットが登場し片付けのヒントを提供するミニアニメ「なんにもない研究室」といったユニークなコーナーが各話に組み込まれていました（最終回は一部構成が異なります）。

ドラマあらすじ

ドラマの主人公まいは、ある日突然「捨てたい」という強烈な衝動に駆られ、かつて物が溢れていた「汚部屋」から一転、徹底的な断捨離を開始します。その情熱は周囲を驚かせ、「捨て変態」と呼ばれるほどになります。彼女は物を極限まで減らし、「なんにもない」究極の minimalist な生活を目指すようになるのですが、その過激なやり方は、物を大切にとっておく習慣のある母（朝加真由美）や祖母（江波杏子）との間で意見の衝突を引き起こします。それでも、まいは断捨離への情熱を燃やし続けます。そんな彼女を理解し、時に戸惑いながらも温かく見守り支えるのは、優しい夫（近藤公園）と、家にいる二匹の愛らしいネコたちの存在でした。ドラマでは、まいが様々な物を捨てる際に抱く葛藤や、家族とのユーモラスなやり取りを通して、片付けや物との向き合い方、そして自分にとって本当に大切なものは何かを問いかけます。撮影は一軒家を貸し切って行われ、劇中に登場する仙台箪笥は著者宅から実際に借り受けた本物が使用されるなど、細部へのこだわりも見られました。

主要キャストとして、主人公まいを夏帆さんが演じたほか、夫のつとむ役を近藤公園さん、母のふみ役を朝加真由美さん、祖母のはつ子役を江波杏子さんが演じました。また、脚本は新井友香氏、音楽は吉田ゐさお氏が担当しています。

『わたしのウチには、なんにもない。』シリーズは、単なる片付け術の紹介にとどまらず、物を減らすことで得られる精神的な解放感や、家族との関係性、自分自身の生き方について問い直すきっかけを与えてくれる作品として、多くの読者や視聴者から支持されています。

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