敷津長吉線

大阪市営地下鉄敷津長吉線：実現しなかった南部の東西軸

大阪市住之江区の住之江公園駅と平野区の喜連瓜破駅を結ぶ計画だった敷津長吉線は、大阪市交通局（現・Osaka Metro）が計画した未成路線です。かつて大阪市が計画した9路線153kmの地下鉄網のうち、実現しなかった路線の一つであり、もし完成していれば、大阪環状線の内側を通らない数少ない地下鉄路線となっていました。

南部地域住民の悲願

この路線が計画された背景には、大阪市南部（住之江区、住吉区、東住吉区、平野区）の東西交通の不便さがあります。長らく東西方向の交通網が未発達だったこの地域において、敷津長吉線の建設は住民にとって長年の悲願でした。計画では、長居公園通の地下を通るルートが検討され、多くの住民の期待を集めていました。

未定だった駅数と規格

具体的な駅数や駅名、各駅の位置などは未定でしたが、他の地下鉄路線との接続駅が複数設置される計画でした。路線規格についても、当初は南港ポートタウン線の延伸を想定し、案内軌条式の新交通システムも検討されました。しかし、立地条件などの問題から見送られ、最終的には長堀鶴見緑地線や今里筋線と同様の鉄輪式リニアモーターミニ地下鉄となる見込みでした。興味深いことに、2013年の大阪市営バス（現・大阪シティバス）の路線再編により、4号系統の一部区間が住之江公園駅から出戸バスターミナル間となり、敷津長吉線の計画ルートと一部重複するようになりました（喜連瓜破～出戸バスターミナル間は谷町線と重複）。これは、バス路線が地下鉄の役割を部分的に担っていたことを示唆しています。

建設実現への道のり

敷津長吉線の建設は、1989年の運輸政策審議会答申第10号で「今後整備を検討すべき路線」に位置づけられました。しかし、2004年の近畿地方交通審議会答申第8号では、「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」から除外され、建設実現の見通しが立たなくなりました。様々な要因が絡み合い、最終的には計画は凍結、そして事実上白紙撤回となりました。

接続予定路線

敷津長吉線は、複数の既存路線と接続する計画でした。主な接続路線は以下の通りです。

住之江公園駅：Osaka Metro四つ橋線、Osaka Metro南港ポートタウン線
長居駅：Osaka Metro御堂筋線、JR阪和線
湯里六丁目駅（仮称）：Osaka Metro今里筋線（今里～湯里六丁目間は計画中でした）
喜連瓜破駅：Osaka Metro谷町線

これらの接続により、大阪市南部地域の交通利便性が大幅に向上することが期待されていました。しかし、計画は実現せず、現在も大阪市南部地域の交通課題は残されています。敷津長吉線の計画は、地域住民の交通利便性向上への強い願いと、都市計画における複雑な要素が絡み合った、一つの事例と言えるでしょう。

もう一度検索