文久遣欧使節

文久遣欧使節について

文久遣欧使節（第1回遣欧使節、開市開港延期交渉使節）は、江戸幕府が1862年に派遣した最初の使節団であり、オランダ、フランス、イギリス、プロイセン、ポルトガルとの修好通商条約の交渉を目的としていました。この使節団は、特に新潟と兵庫の開港及び江戸、大坂の開市延期に関する交渉、またロシアとの樺太国境に関する議論を行うために組織されました。正使には竹内保徳、副使には松平康直、目付には京極高朗が任命され、総勢38名のメンバーから成る使節団は、それぞれ専門家や通訳を含む多岐にわたる人材で構成されていました。

使節団は1862年12月22日（旧暦では同年の1月21日）、品川港を出発しました。出発には英国海軍の蒸気フリゲート、オーディン号が利用され、長崎、香港、シンガポール、セイロン、アデンを経由してスエズ運河へ向かいます。そこでカイロからアレクサンドリアへ抜け、地中海を渡りマルセイユに到着しました。4月7日にはパリに辿り着き、フランス政府と交渉をしましたが、開港延期についての同意は得られませんでした。

その後、イギリスに向かい、5月にはロンドンでオールコックの協力を得て、開港延期のロンドン覚書が調印されました。この覚書では、開港・開市の延期が5年となり、1868年1月1日とされました。さらに、オランダやプロイセンとの間でも同様の協定が結ばれましたが、ロシアとの樺太国境画定に関しては合意には至らなかったのです。

使節団は帰路、ポルトガルやフランスを経由し、1863年1月30日に約1年間の旅を終えて日本へ帰国しました。ロンドン滞在中、彼らは万国博覧会に出展された日本の展示品を見学し、イギリスの産業革命による技術や文化を目の当たりにしました。その中で、日本コーナーに展示された品々は海外での初めての紹介として非常に高く評価されました。

また、使節団は多くの歴史的な名所を訪れ、イギリスの社会や文化にも深く触れる機会を得ました。幕末期におけるこの使節団の活動は、日本における国際交流の第一歩であり、従来の鎖国政策からの転換点とも言えます。

この使節団に関する記録や当時の活動は、多くの文献によって後世に語り継がれています。特に、碑文や日記、当時の写真などは、彼らの活動を具体的に知る貴重な資料となっています。文久遣欧使節は、日本と欧州との外交関係を発展させる重要な役割を果たし、近代国家へ向けた一歩を踏み出すきっかけとなったことでしょう。

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