竹内保徳

竹内保徳（たけのうち やすのり）は、文化4年（1807年）に生まれ、慶応3年（1867年）に没した江戸時代末期の幕臣です。下野守の官位を持ち、幼名は清太郎と称しました。父は200俵の旗本である竹内富蔵です。

幕府の勘定所に出仕し、勘定組頭格を経て嘉永5年（1852年）に勘定吟味役・海防掛に就任しました。嘉永6年（1853年）の黒船来航後は、台場普請掛、大砲鋳立掛、大船製造掛、米使応接掛を兼任し、海防強化に奔走しました。安政元年（1854年）には箱館奉行に就任し、アイヌの人々への政策において独自の姿勢を示しました。具体的には、幕府の命令に逆らい、アイヌに髪を切ることを免除したり、漁業の発展に尽力したことで、アイヌからの尊敬を集めたと言われています。箱館奉行在任中にはニシンが豊漁であったため、「ニシン奉行」という異名も持ちました。

文久元年（1861年）には、勘定奉行兼外国奉行に昇進し、同年12月には文久遣欧使節の正使として、30名以上の使節団を率いて横浜を出港し、イギリスへと向かいました。ロンドンでは第二回ロンドン万博に出席し、日本の文化や技術をヨーロッパに紹介しました。当時の日本国内では攘夷運動が激化しており、竹内は江戸・大坂の開市、新潟・兵庫の開港延期を目指し、ヨーロッパ各国と交渉を行いました。その結果、5年間の延期を各国に認めさせることに成功しました。文久2年（1862年）5月には、イギリスとの間でロンドン覚書を締結し、同様の協定をプロシア、ロシア、フランス、ポルトガルとも結びました。

文久2年（1862年）にフランス船で帰国しましたが、当時の幕府は攘夷主義の朝廷との関係を重視しており、竹内は登用されませんでした。翌年には勘定奉行を辞任し、元治元年（1864年）5月には大坂町奉行に推薦されましたが、着任することなく退隠しました。同年8月には、閑職である西ノ丸留守居となります。慶応元年（1865年）12月には、横浜製鉄御用引受取扱となりました。慶応3年（1867年）に死去しています。

竹内保徳は、幕末の激動期において、勘定奉行、外国奉行として幕府の財政や外交に尽力し、遣欧使節の正使としてヨーロッパ各国との交渉にあたりました。特に、開市・開港の延期交渉を成功させたことは、攘夷運動の高まりの中で、幕府が国内の状況に対応するための時間稼ぎとして重要な意味を持っていました。また、箱館奉行時代には、アイヌの人々に対する独自の政策を行い、彼らからの信頼を得ました。竹内保徳は、幕末の政治・外交において重要な役割を果たした人物として評価されています。

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