文字言語

文字言語とは

文字言語は、文字を媒介として成立する言語体系です。一般的に、音声言語を基盤として発展すると考えられていますが、単に音声言語を文字に置き換えたものではありません。文字言語には、語の区切りを示すスペースや改行など、文字を使用する上で独自の特徴があります。

文語との関係

文字言語は、文語や書記言語とは異なる概念です。しかし、これらの用語はしばしば曖昧に使用されることがあります。文語は、古典的な文章表現を指し、書記言語は、文字を用いた言語全般を指す場合があります。文字言語は、これらの概念と関連しつつも、特定の文脈や目的に応じて異なる意味合いを持つことがあります。

音声言語との関係

自然言語は、口頭言語を基本とし、音声言語を伴いますが、文字を持たない言語も存在します。文字言語は通常、音声言語から派生するため、対応する音声言語が存在するのが一般的です。文字言語のみを持つ自然言語は基本的に存在しませんが、口頭言語が使われなくなっても文字記録として残る場合もあります。一方で、プログラミング言語などの人工言語は、音声言語を持たないこともあります。

文字言語は、音声言語を基盤として二次的に派生しますが、文字言語の構造は、単に音声言語の音韻体系を表記しただけのものではありません。ただし、実際には音声言語が文字言語に影響を与え、文字言語が音声言語に影響を与えるという相互作用があります。

歴史的に、文字を持たない文化は、文明が未発達であると見なされ、侵略の正当化に利用されることがありました。アイヌ民族などがその例です。

音声言語は、口から発せられ、すぐに消えてしまうため、直接的なコミュニケーションに適しています。一方、文字言語は、筆記具を用いて記録され、保存が可能であるため、時間や距離を隔てた相手とのコミュニケーションに適しています。この特性から、書記言語は論理的に構成される必要性が出てきます。

音声言語における強調や大声は、文字言語では傍点や括弧で表現され、疑問文のイントネーションは疑問符で表されます。途切れ途切れの発言は、リーダー（…）やダッシュ（—）で表現されます。

インターネットによる変化

インターネットなどの電子メディアの普及は、文字言語の役割に大きな変化をもたらしました。従来の文字言語は、公文書や文学作品のように、時間を置いて読まれる文章が中心でしたが、インターネットや携帯電話の普及により、電子掲示板やチャットのように、ほぼリアルタイムに読まれる文字言語が誕生しました。

このような用途では、より口語に近い言葉遣いが用いられるようになり、顔文字やインターネットスラングなどの新しい表現も生まれています。これにより、文字言語は、より多様で柔軟な表現を持つようになりました。

まとめ

文字言語は、音声言語を基盤としつつも、独自の特徴を持つ言語体系です。歴史的な背景や技術の進歩とともに、その役割や表現方法も変化してきました。特に、インターネットの普及は、文字言語の使われ方に大きな変化をもたらし、リアルタイムなコミュニケーションにおける文字言語の役割を拡大させました。

参考文献

犬飼隆『上代文字言語の研究【増補版】』笠間書院、2005年（旧版1992年）
河野六郎「文字の本質」『岩波講座日本語8文字』岩波書店、1977年（のちに『文字論』三省堂、1994年、収録）
『言語学大辞典第6巻術語編』三省堂、1996年。
永野賢『伝達論にもとづく日本語文法の研究』東京堂出版、1970

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