文芸プロダクションにんじんくらぶ

文芸プロダクションにんじんくらぶ

文芸プロダクションにんじんくらぶは、日本の映画界において特に女性の視点からの作品制作を目指した独立系映画制作プロダクションです。1954年4月16日、岸惠子、久我美子、有馬稲子の3人が設立したこのプロダクションは、当初から自由な映画制作を求める姿勢で注目されました。設立の背景には、松竹及び東宝の専属俳優として活動していた彼女たちが、俳優の自由な活動を奨励したいという思いがありました。

設立当初の資本金は50万円で、代表取締役社長には若槻繁が就任しました。彼女たちは「俳優のための映画の企画をする」という目的のもと、独立した映画製作を進めることを決定し、そうした活動を通じて実現したい作品を持つ俳優たちのマネジメントにも力を入れました。

最初の作品は、1955年に公開された『胸より胸に』で、家城巳代治が監督を務めました。この映画は、彼女たちが製作を切望した作品でもあり、その後も『風花』や『人間の條件』といった多くの名作を世に送り出しました。特に『人間の條件』シリーズは、映画館での評価が高く、キネマ旬報ベスト・テンで高い順位を誇る作品となりました。

1965年には『怪談』が公開され、これも非常に高い評価を受けました。しかし、巨額の製作費と興行不振から、同年には大きな負債を抱え、事実上倒産に至りました。倒産後は、所属俳優たちの意見が分裂し、新たに劇団が結成されることになりました。この様子は、当時の日本映画界においても注目を集めました。

その後、設立者の若槻は「にんじんプロダクション」を新たに立ち上げて映画製作を続け、1966年には日本と台湾の合作映画『カミカゼ野郎 真昼の決斗』を手掛けています。これにより、にんじんくらぶの精神は新たな形で引き継がれ、映画製作の分野での女性の存在感を引き続き強調することとなりました。

主な製作作品

• - 胸より胸に（1955年）
• - 黒い河（1957年）
• - 人間の條件・第一・第二部（1959年）
• - 人間の條件・第三・第四部（1959年）
• - 人間の條件・完結篇（1961年）
• - もず（1961年）
• - からみ合い（1962年）
• - お吟さま（1962年）
• - 充たされた生活（1962年）
• - 裸体（1962年）
• - 乾いた花（1964年）
• - 怪談（1965年）

このように、文芸プロダクションにんじんくらぶは、さまざまな名作を通じて日本の映画界に新たな風を吹き込み、女性の役割を明確にしたプロダクションとして、今なお多くの映画愛好者に語り継がれています。

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