黒い河

『黒い河』（くろいかわ）は、1957年に公開された日本のドラマ映画です。富島健夫の同名小説を原作とし、にんじんくらぶが企画、小林正樹が監督を務めました。公開当時、映画倫理管理委員会（映倫）によって成人映画（映倫番号10330）に指定されたことでも話題となりました。

概要

本作は、戦後の混乱期における退廃した都会の世相を、小林正樹監督が独特の乾いたタッチで描き出した作品です。前作『あなた買います』（1956年）に続き、社会の暗部を鋭く捉えた作風が特徴です。特に注目すべきは、若手俳優であった仲代達矢が演じる、ケレン味あふれる悪役の存在感です。この作品での演技が高く評価され、仲代は2年後に始まる小林監督の代表作『人間の條件』シリーズの主演に抜擢されることとなります。

あらすじ

舞台は、さまざまな問題を抱えた人々が住む貧乏長屋「月光荘」。この長屋に引っ越してきた大学生の西田を中心に物語は展開します。彼は、そこで働くウェイトレスの静子に恋心を抱きます。一方、長屋にはチンピラのリーダーである「人斬りジョー」をはじめ、一癖も二癖もある住人たちが暮らしており、それぞれの人間模様が複雑に絡み合っていきます。登場人物たちの欲望、葛藤、そして生きるためのエネルギーが、この閉鎖的な空間の中でぶつかり合い、ドラマチックな展開を生み出していきます。

キャスト

静子: 有馬稲子
西田: 渡辺文雄
人斬りジョー: 仲代達矢
月光荘の住人
岡田: 永井智雄
妻康子: 淡路恵子
坂崎: 佐野浅夫
金賢順: 宮口精二
妻美秀: 三戸部スエ
栗原: 東野英治郎
栗原の妻: 高橋とよ
山口: 富田仲次郎
妻綾子: 春日千里
パアの夫: 小笠原章二郎
パアのかあちゃん: 菅井きん
安井: 大杉莞児
安井の女房: 賀原夏子
家主幹子: 山田五十鈴
ジョーの情婦・幸子: 桂木洋子
黒木: 清水将夫

スタッフ

監督: 小林正樹
脚色: 松山善三
原作: 富島健夫
企画: にんじんくらぶ
製作: 桑田良太郎
撮影: 厚田雄春
美術: 平高主計
音楽: 木下忠司
録音: 西崎英雄
照明: 須藤清治
編集: 浜村義康

作品の魅力

『黒い河』は、単なる社会派ドラマとしてだけでなく、登場人物それぞれの心の機微を丁寧に描いた人間ドラマとしても見応えがあります。小林監督の演出、仲代達矢の存在感、そして長屋に住む個性豊かなキャラクターたちが、作品に深みを与えています。また、戦後の退廃的な雰囲気をリアルに再現した映像も、作品の魅力を引き立てています。この作品は、公開から年月を経た現在でも、多くの映画ファンに愛され続けています。

関連情報

黒い河 - allcinema
黒い河 - KINENOTE
Kuroi Kawa - オールムービー（英語）
* Kuroi kawa - IMDb（英語）

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