斯多含

斯多含（したがん）

斯多含（生年547年? - 没年563年?）は、新羅時代の花郎（ファラン）に属した武将です。第17代の奈勿尼師今（ナムルニサグム）の7世孫にあたり、金（キム）姓を名乗っていました。彼の出自は非常に尊く、品性にも優れていたため、花郎に選ばれたとされています。

生涯

562年9月、新羅が伽耶地域の大伽耶（高霊伽耶）を討伐しようとした戦役において、斯多含は主将である異斯夫（イサブ）と共に副将として従軍しました。当時、斯多含は15歳か16歳という若さであり、通常であれば年齢を理由に従軍は許されない状況でしたが、真興王（チヌンワン）に直訴し、特別に許可を得て参戦することになりました。

斯多含は5千騎の兵を率いて旃檀門（せんだんもん）から突入し、その勢いに圧倒された大伽耶は抵抗することなく降伏しました。この戦いによって、伽耶諸国は新羅によって完全に制圧されることとなり、斯多含の戦功は真興王から高く評価されました。

戦後、真興王は斯多含に恩賞として、伽耶人の捕虜300人（または200人という説もあります）と広大な田地を授けようとしました。しかし、斯多含は捕虜を奴婢として扱うことをせず、彼ら全てを良民として解放しました。また、田地についても三度にわたって固辞し、最終的には不毛の地のみを受領しました。この斯多含の寛大な行為は、新羅の人々から大いに称賛されたと伝えられています。

斯多含は、同じ花郎の一人と命を懸けて友情を誓い合っていました。その花郎が病に倒れ亡くなった際、斯多含は7日間も慟哭し、まるで後を追うかのように亡くなったとされています。享年はわずか17歳でした。

斯多含の短い生涯は、武将としての功績だけでなく、その高潔な人柄によって彩られています。彼の行動は、新羅社会における道徳的な模範となり、後世にまで語り継がれることとなりました。

参考文献

『三国史記』第4巻 金富軾撰 井上秀雄･鄭早苗訳注、平凡社〈東洋文庫492〉、1988 ISBN 4-582-80492-6
『三国史記』第1巻 金富軾撰 井上秀雄訳注、平凡社〈東洋文庫372〉、1980 ISBN 4-582-80372-5

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