新しき土

新しき土（あたらしきつち）

『新しき土』は、1937年に公開された日独合作の映画で、原題は『Die Tochter des Samurai』（『侍の娘』）です。本作は、東和商事映画部とJ.O.スタヂオの共同制作によるもので、特にアーノルト・ファンクと伊丹万作が監督を担当しています。特異な点として、映画はドイツ人の視点から描かれ、日本の文化や風景がどのように外国人に映じたのかという側面を持っています。

ディレクターのビジョン

映画の背景には、日独間での政治的および軍事的関係があり、ナチスドイツが日本のイメージを高めようとしていたことが影響しています。特に、フリードリヒ・ハックが同行した撮影隊は、日独軍事協定締結交渉の一環という秘密の使命を帯びていました。そのため、映画には政治的な意図が色濃く反映されています。

物語のあらすじ

ストーリーは、ドイツに留学したエリート青年・輝雄が恋人のゲルダを引き連れて帰国するところから始まります。しかし、輝雄はすでに許婚の光子がいました。彼は帰国後、光子やその家族に温かく迎えられますが、留学を通じて西洋文化に接したため、彼女に対する愛情は薄れてしまっています。光子は輝雄との結婚を父の巌とともに喜ぶものの、彼は古い慣習を拒否し、結婚を無理にでも解消しようと試みます。結果として、傷ついた光子は絶望し、花嫁衣装を持って浅間山に身を投げる決意を固めます。

主要キャスト

キャストには、当時の人気俳優である原節子や早川雪洲が名を連ねています。ゲルダ役を演じたルート・エヴェラーを含む彼らの演技は、映画の物語への没入感を高めています。また、音楽を担当したのは山田耕筰で、彼の楽曲が物語の雰囲気を効果的に引き立てています。

撮影と技術

この映画の制作において特に注目されるのは、円谷英二の撮影協力です。円谷は本作で、日本において初めて本格的なスクリーン・プロセス撮影を行うことに成功しました。結果として、美しい日本の自然が映し出されていますが、一方で地理的矛盾も散見されます。例えば、東京市街に阪神電車が走る場面、夜景のシーンで東京と大阪の混在、さらには光子の家の背景に厳島神社が見えるなど、日本の地理感覚が乏しい部分もありました。

公開と評価

1937年のドイツでの公開時に、国民啓蒙・宣伝省がこの映画に目をかけ、ヒトラーとゲッベルスが自らその内容を検閲し、最終的な許可を与えたという事実もあり、政治的な意味合いを持っていました。後に、2012年4月7日には、日本全国で75年ぶりにリバイバル上映が行われ、多くの観客がその存在を再認識しました。

このように、『新しき土』は日本とドイツの文化的交流の一端を示しながらも、個人の葛藤や愛の行方を通じて深いメッセージを与えています。映画の背後には、時代の変遷や国際関係が多くの影響を及ぼしていることを考慮する必要があります。

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