新カルメン物語

新カルメン物語：トムとジェリーの大騒動！

1962年、ジーン・ダイッチ監督が手がけたトムとジェリーシリーズ最終作『新カルメン物語』（原題：Carmen Get It!）は、オペラハウスを舞台に繰り広げられる、予測不能な騒動劇です。4:3の標準サイズで制作された本作は、従来の作品とは一線を画す、ユニークな展開が魅力となっています。

物語は、ジェリーがオペラハウスに逃げ込んだことから始まります。トムはジェリーを追いかけますが、守衛に阻まれ、入場を許されません。しかし、トムはあきらめません。彼は様々な変装を試み、最終的にコントラバス奏者になりすまして、オペラハウスに潜入することに成功します。

トムが持ち込んだコントラバスケースの中には、さらにチェロ、ヴィオラ、ヴァイオリンのケースが入れ子状に収納されており、その一番奥には「カルメン」の演奏が録音されたテープが入った偽物のヴァイオリンが隠されていました。

トムは、演奏が始まる前にチーズで弓を擦り、テープを再生します。そして、ジェリーをおびき寄せるため、弓を巧みに操り、チーズの香りを漂わせます。ジェリーを捕まえようとしますが、ジェリーはヴァイオリンの中に逃げ込み、テープを早回ししてしまいます。

演奏が台無しになった指揮者は激怒し、トムをヴァイオリンで叩きます。ジェリーはトムから逃れるため、指揮者のタキシードの中に入り込み、指揮者をくすぐり、演奏はジャズのような混沌としたものになってしまいます。ジェリーはその後、チューバの中に逃げ込み、トムに捕まりそうになりますが、再び逃げ出します。

指揮者は休憩のため水を飲んでいる間に、トムがジェリーを捕まえようと譜面台に登ったところを、厚い譜面で挟み込み、反撃します。

一方、ジェリーは休憩室でアリのコロニーを見つけます。ジェリーはアリを巧みに操り、まるでハーメルンの笛吹き男のように、指揮者が去った指揮台へと導きます。そして、アリを楽譜上の音符に見立て、トムを罠にかけようとします。

トムが指揮台に立つと、スポットライトが当たり、トムは仕方なくオーケストラを指揮することになります。しかし、ジェリーはアリの位置を変え続け、トムの指揮を狂わせていきます。その結果、オーケストラからは「ヤンキードゥードゥル」、「ディキシー」、「There'll Be a Hot Time in the Old Town Tonight」といったアメリカの伝統曲が演奏されることになります。

アリが散り散りになり、トムはジェリーにだまされたことに気づきます。トムはジェリーを捕まえ、指揮台の照明ソケットに差し込んでスイッチを入れようとしますが、指揮者が戻ってきて、トムは逃げ出します。

ようやくオペラが始まり、カルメン役の歌手が登場しますが、ジェリーが闘牛士に扮して登場したことで、歌手は悲鳴を上げて舞台裏に逃げ込んでしまいます。トムはジェリーを捕まえようとしますが、指揮者はオペラが台無しになったことに激怒し、トムと闘牛のような喧嘩を始めます。ジェリーは、この騒動を巧みに操り、観客に頭を下げ、アリは「THE END」の文字を形作ります。

本作では、トムとジェリーのコミカルなやり取りだけでなく、オペラという舞台設定を巧みに利用した演出、そしてアリの大群や予測不可能な展開など、様々な要素が織り交ぜられています。ジーン・ダイッチ監督による最後のトムとジェリー作品として、その独特のユーモアと斬新なアイデアが詰まった、忘れられない一作となっています。スクロール表示されるタイトルクレジットも、作品全体の雰囲気をさらに高めています。

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