新グローヴオペラ事典

新グローヴオペラ辞典

『新グローヴオペラ辞典』（The New Grove Dictionary of Opera）は、オペラという芸術形式に関する、最も包括的で権威ある英語の百科事典です。この分野における主要かつ最も信頼される参考文献の一つとして、世界中の研究者や音楽愛好家から広く認識されています。

本書は、オペラに関する英語の著作物としては比類なき規模を誇ります。印刷版は壮大な全4巻構成で、総ページ数は5,448ページにも及びます。この膨大なボリュームの中に、オペラの歴史、作品、人物に関する詳細な情報が詰め込まれています。

初版は1992年に、ロンドンの名門出版社であるマクミラン社から刊行されました。編集は、著名な音楽学者であるスタンリー・セイディ氏が手がけました。執筆には、世界中から集められた1,300名を超える音楽学者、批評家、専門家が携わっており、その高い専門性と多様な視点が事典の信頼性を支えています。

収録されている記事数は全体で約11,000項目にのぼります。これらの記事は、オペラの多岐にわたる側面を網羅しています。具体的には、2,900人もの作曲家に関する伝記や業績解説、そして彼らが手掛けた1,800に及ぶオペラ作品個別の解説が含まれます。作品解説では、あらすじ、登場人物、音楽的特徴、初演に関する情報などが詳細に記述されています。さらに、有名なアリアやアンサンブル、オペラ劇場、歌手、指揮者、リブレット作家、舞台美術家、オペラの歴史的発展、地域ごとのオペラ文化、技術的な用語など、オペラに関するあらゆる情報が網羅的に扱われています。

事典の構成も、利用者の利便性を考慮して工夫されています。巻末には、豊富な付録が収められています。例えば、作品中の登場人物名からオペラを探し出すことができる役名索引は、特定のキャラクターが登場する作品を知りたい際に非常に役立ちます。また、主要なアリアやアンサンブルの冒頭部分を楽譜で示したインキピットは、曲名を思い出せない場合に旋律から特定する助けとなります。さらに、オペラ作品名の索引も完備されており、目的の情報に素早くアクセスできるようになっています。

現在では、伝統的な印刷版に加え、最新のデジタル技術を用いた電子版も提供されています。これは、オックスフォード大学出版局が運営する『ニューグローヴ世界音楽大事典』を含む「オックスフォード音楽オンライン」の一部として、オンラインで購読可能です。このオンライン版により、場所を選ばずに事典の膨大な情報にアクセスすることが可能となり、研究や学習の機会が飛躍的に拡大しています。

『新グローヴオペラ辞典』は、その網羅性、正確性、権威性において、オペラに関する知識を深めたい全ての人々にとって、まさに不可欠な情報源と言えるでしょう。専門的な研究から愛好家の探求まで、オペラの豊かな世界への扉を開く鍵となる一冊です。

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