新マクロス級超長距離移民船団

新マクロス級超長距離移民船団は、アニメ「マクロスシリーズ」に登場する架空の宇宙移民船団であり、新マクロス級移民船団とも呼ばれます。この船団は、『マクロス7』や『マクロスF』などの主要な舞台として登場し、他の作品にも頻繁に登場します。

概要

1982年から1983年にかけて放映された『超時空要塞マクロス』では、全長約1,200メートルの宇宙戦艦「マクロス」が登場しました。この艦は、地球人類が入手した巨人サイズの宇宙艦を改修したもので、多数の民間人が乗り込み、艦内に市街地が築かれるという設定でした。また、主砲発射の都合上、ロボットに変形するという特徴も持っていました。

『超時空要塞マクロス』の最終話では、人類の存続を目的とした宇宙移民計画の存在が語られ、1987年に発売されたミュージックビデオ『超時空要塞マクロス Flash Back 2012』では、巨大移民船「メガロード-01」が出航する様子が描かれました。

1994年から1995年にかけて放映された『マクロス7』では、メガロード-01の後継として、100万人規模の移民を乗せた「新マクロス級超長距離移民船団」が登場しました。作品世界では、『超時空要塞マクロス』から約20年後の西暦2030年より順次出航が開始され、『マクロス7』の舞台となる「マクロス7船団」は、新マクロス級7番艦を旗艦とする第37次超長距離移民船団という設定です。

その後も、ラジオドラマ『マクロス・ジェネレーション』やコンピュータゲーム『マクロス VF-X2』で他の船団が描かれ、2008年放映の『マクロスF』では、約1000万人が暮らす新マクロス級25番艦を旗艦とする第55次超長距離移民船団「マクロス・フロンティア船団」が舞台となりました。

『超時空要塞マクロス』のマクロスでは、ロボットに変形する艦内部に市街地がありましたが、新マクロス級移民船は居住区画と戦闘区画が分割され、都市を内包した居住艦の前部に、バトル級可変ステルス攻撃宇宙空母がドッキングした状態で航行します。バトル級は緊急時には居住艦と分離し、人型ロボット形態に変形します。

制作・デザイン

『マクロス7』原作者の河森正治は、前作『超時空要塞マクロス』のマクロスのサイズでは街を入れるには小さすぎると考え、戦闘艦と居住艦を分割する発想に至りました。

マクロス7をはじめとする大型艦や護衛艦艇、民間船は宮武一貴がデザインしました。宮武は、居住区画を別にすることで「純粋な戦闘艦としてのマクロス艦」がデザイン可能になったと語り、ステルス艦以外の選択肢はなかったと述べています。戦艦と都市の配置については、「背中に都市を背負う」というアイデアが最初に出され、当時店頭に並んでいたロボット玩具のインパクトに対抗するため、インパクトの強さを重視したデザインが行われました。

商品化が見送られたことで、マクロス7の居住艦シティ7は戦闘艦バトル7よりもはるかに巨大化しました。河森は、宇宙で街を見せつつ、スペースコロニーとの差別化を図るため、ビルを突き出して見せるようにデザインしました。また、戦闘時のカバーとして『浦島太郎』の亀のような神話的モチーフを取り入れ、居住艦に甲羅のような蓋をつけるデザインを宮武に依頼しました。宮武は、シェル開閉式のドーム型としたのは画面映えを意識したためだと語っています。

バトル7の変形コンセプトとデザインは同時進行で行われ、変形過程は徹底的にシンプルにされました。ステルスカットから空母の形状になり、巨大な質量ゆえに変形機構も容易に組み込めると考えられました。強攻型は和風デザインが徹底され、脚の部分は袴、艦橋（頭部）は兜をモチーフとしています。

宮武は、文化の伝道者という位置づけから、1艦だけでは文化の維持が難しいと考え、艦隊の設定にしました。マクロス7という名前から、都市としての機能を分担する7隻の艦で構成されることになりました。

『マクロス7』に登場するマクロス5船団や、『マクロス VF-X2』に登場するマクロス13も宮武がデザインを手がけています。

河森は発想のルーツとして、高校時代に描いていた太陽系を模した移民艦隊というコンセプトの『太陽艦隊』を挙げています。

その後、『地球少女アルジュナ』の制作経験から、環境をセットにした方が生態系として効率的であることを知り、『マクロスF』のマクロス・フロンティア船団では、山、水田、畑、海で構成された基本ユニットを繋げることで生態系を連続させる設定としました。

設定

超長距離移民船団

第一次星間大戦で滅亡の危機に瀕した地球人類は、終戦後に「人類移住計画」（銀河播種計画）を発動します。宇宙の新天地を目指す移民船団が次々と旅立ち、「銀河の大航海時代」の幕が開けました。移民事業は小規模船団による短距離移民計画と、大規模船団による超長距離移民計画の2通りが並行して行われました。後者は有事の再来に備え、人類種と星間大戦の勝利の鍵となった「文化」を広域拡散（播種）することを目指していました。

超長距離移民船団は、ゼントラーディ軍の自動工場衛星を利用して量産された巨大移民船を中心に、新統合軍の護衛艦や民間船などによって構成されます。メガロード級移民船などによる第1次から第30次を経て、第31次から新マクロス級移民船に切り替えられました。以後の新マクロス級移民船による移民船団は「第××次超長距離移民船団」という正式名称とは別に、旗艦となる巨大移民船にちなんで「マクロス○○船団」という通称でも呼ばれます。

船団各艦は、超空間跳躍を可能にするフォールドシステムを搭載し、長距離フォールドを重ねて航行します。フォールドに費やすエネルギーは質量に比例し、巨大船の長距離フォールドには数か月分のエネルギー蓄積が必要です。地球および各船団には、フォールド通信を利用したギャラクシー・ネットワーク（銀河ネットワーク）が構築され、情報や電子マネーのやり取りが行われていますが、移動や物流は距離の壁に制約され、「大航海時代にインターネットだけある」ような状態にあります。さらに、フォールド断層と呼ばれる時空の歪みの影響でフォールドができなかったり、通信に大幅なタイムラグが生じることもあります。

新マクロス級移民船

新マクロス級移民船は、少なくとも25番艦まで建造されたメガロード級移民船に次ぎ、2030年に1番艦が就航しました。同じ艦級でも、建造時期や設計コンセプトによりドーム型、密閉コロニー型など構造は多様です。また、建造年が下るに従って、後部に接続される居住艦が著しく大型化しています。

宇宙戦艦SDF-1マクロスをベースに設計・建造されたメガロード級とは異なり、新マクロス級では、移民者が長期航海に耐えられるよう居住環境が大幅に改善されています。メガロード級までは宇宙船内に居住施設が内包される形式でしたが、新マクロス級では居住と戦闘の機能が分割され、シティまたはアイランドと呼ばれる都市型移民居住艦の前部に、超大型可変万能ステルス宇宙攻撃空母（バトル級可変ステルス攻撃宇宙空母）がドッキングする方式となりました。巡航時のドッキング状態では、バトル級の主反応炉を起動動力源（キックモーター）にして接合部分のエネルギープラントで船全体の推力を生成します。

マクロス7やマクロス・フロンティアのようなドーム型船では、艦体上半分に市街地区画があります。住民の精神安定と文化的多様性の維持を目的に、星間大戦で失われる前の地球環境を再現した船団も存在します。上空は透明ドームに包まれており、人工的に気象制御が行われます。その上部を覆う巨大な貝殻のような天蓋（防護シェル）は巡航時には開放され、内面にホログラフィック映像で地球の気象（昼夜や晴雨）が再現されます。戦闘時には防護シェルの閉鎖（シェルダウン）で居住区の安全が守られます。船体下半分の地下には居住区や工業区、宇宙船の修理ドック、推進部などが複雑に入り組んでおり、長い航海の間に閉鎖・放棄される区画も少なくありません。

旅の終わりに大気や水資源に恵まれた惑星、または環境改良が可能である惑星が見つかれば、居住艦は湖や海に着水し、そのまま開拓事業の拠点都市として機能することになります。

バトル級可変ステルス攻撃宇宙空母

超長距離移民船団護衛艦隊の総旗艦・総司令部であり、全長1,500メートルを超える超大型攻撃宇宙空母です。名称は各移民船団名にちなみ「バトル○○」と呼ばれ、マクロス7では「Big-M」とも呼ばれます。基本的な構造はどのバトル級も同一ですが、後年の同級はやや大型化の傾向があり、各移民船団によって細かい意匠や配色に差異が見られます。

メガロード級では一旦廃止された強攻型（人型）への変形機構であるトランスフォーメーション機能を有しており、外敵に護衛艦隊の防衛網が破られるような緊急事態では居住艦から分離・出撃します。同艦はステルス効果のために全火器が収納されており、近接攻撃モードである強攻型へ変形することで、それらが全て使用可能になります。このクラスは戦闘時にバトル級がシティ艦から分離して活動するため、住民への気兼ねなく戦術戦闘手段として変形を活用できます。変形プロセスは単純化され、無防備となる時間も著しく短縮されています。飛行甲板前部が両腕、後部が両脚として伸張、ブリッジ部が頭部となります。

艦首下部（バルバス・バウ）にあたる位置に、本級最大火力の武器である「マクロス・キャノン」に変形するガンシップがドッキングしています。ガンシップはトランスフォーメーションの際は分離し、強攻型の肩部、または右手に握られ、主砲としての火力を発揮します。連射も可能です。ガン・シップ単独でも分離後に行動して発砲も可能ですが、その際の威力は低下し、連射は不可能となります。マクロス・フロンティア船団の旗艦バトル・フロンティアは、攻撃空母型のまま主砲が発射可能で、開放式のため広域砲撃も可能です。その他にも副砲や対空砲、艦載機などを多数搭載しています。

『マクロス VF-X2』に登場するバトル13や、『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』に登場するバトル・アストレアのように、シティ艦を伴わない戦闘用に改造されたバトル級も存在します。

船団内の社会

移民艦の規模にもよりますが、船団の総人口は数十万人から1千万人に達します。構成員は一般市民の他に生産・整備・娯楽などの従業者、自治政府職員、新統合軍関係者など様々で、スラム住民や不法滞在者なども含まれます。地球人、マイクローン化したゼントラーディ人、ゾラ人、これらの混血者などが暮らす多人種社会であり、言語もマルチリンガル化しています。行政は地球の新統合政府の統治下にありますが、それぞれの船団に高度な自治権が認められており、独自通貨も流通するなど、旧世界における地域国家・都市国家のような半ば独立国家に近い形態にあり、採用している元首も船団ごとに市長制・大統領制と異なっています。船団の運営にはスポンサーの星間巨大企業体の意向も反映されます。

各船団は必要物資を自給できるよう大規模な生産施設を備えており、可変戦闘機などの主力艦載兵器も地球や移民惑星または他の船団から送られた開発データをもとにライセンス生産しています。外貨獲得のため観光や宇宙資源の輸出を行い、船団間の交通には民間の星間連絡船が活躍します。

移民船は基本的に居住可能な惑星に着くまでの「仮住まい」ですが、マクロス9船団が旅立って以降は目的地に辿り着けなければ永続的に航行してもよいという選択肢が考えられるようになりました。その結果、社会構造も環境重視型のマクロス・フロンティア船団とハイテクノロジー重視型のマクロス・ギャラクシー船団のように、船団ごとに思想が分かれるようになりました。それゆえ、思想の分割は各船団間での外交上の対立や抗争などが発生する危険性を孕むことになり、2059年には宇宙生物バジュラとの遭遇をきっかけに、フロンティア船団とギャラクシー船団との間で移民船団同士の紛争が勃発します。

(以下、船団一覧は省略。オリジナルドキュメントを参照してください)

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