新中道右派

イタリアの政党「新中道右派（NCD）」：ベルルスコーニ政権からの離脱と中道政治への軌跡

新中道右派（Nuovo Centrodestra、略称NCD）は、イタリア政治史において重要な役割を果たした政党です。その存在は、シルヴィオ・ベルルスコーニというイタリア政治を長年リードしてきた人物の存在抜きには語れません。本稿では、NCDの成立から終焉までをたどり、その政治的意義を考察します。

NCDの起源は、ベルルスコーニ率いる中道右派政党「自由の人民」内部の対立に遡ります。アンジェリーノ・アルファノ氏を筆頭とする反ベルルスコーニ派は、党内における自身の立場を危うくする中、自由の人民からの離脱を決意します。この反ベルルスコーニ派は、当初は自由の人民内部の院内会派として活動していましたが、後に自由の人民が解散すると、アルファノ氏を中心として新たな政党、新中道右派を結成しました。

この決断は、イタリア政治の大きな転換点を示唆するものでした。NCDは、従来の中道右派とは異なる政治路線を追求することを明確にしました。特に、台頭しつつあったポピュリズムに対抗するため、中道左派政党との協力関係を積極的に構築していきました。

この戦略の下、NCDはレッタ内閣、レンツィ内閣、そしてジェンティローニ内閣と、相次ぐ中道左派政権への参加を果たしました。この連立政権への参加は、イタリア政治におけるNCDの影響力の大きさを示すものであり、中道右派と中道左派による「大連立」という政治状況を生み出す要因の一つとなりました。

議会内では、中道右派勢力や中道左派勢力と協力関係を築き、院内会派「人民エリア（Area Popolare、AP）」を形成しました。この「人民エリア」は、イタリア政治における重要な政治勢力のひとつとして位置づけられ、NCDの政治的影響力拡大に貢献しました。

しかし、NCDは結成当初の理念から徐々に離れていくことになります。党内における政治的思惑や所属議員の離脱・流入により、党の路線は当初の方針から変化していきました。その結果、2017年3月18日、NCDは新たな政党「人民の選択肢（Alternativa Popolare、AP）」へと再編されることになります。これは、NCDの歴史に終止符を打つ出来事となりました。

NCDは、短期間の政党ではありましたが、イタリア政治に大きな影響を与えました。ベルルスコーニ時代からの転換期における政治的混乱と、台頭するポピュリズムへの対応という困難な状況の中で、中道左派との連立政権を維持しようとする試みは、イタリア政治史に刻まれる重要な出来事と言えるでしょう。NCDの経験は、イタリアにおける中道政治のあり方や、政党運営の課題を浮き彫りにし、今後のイタリア政治を考える上で重要な教訓を提供するものです。

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