新地発電所

新地発電所（しんちはつでんしょ）は、福島県相馬郡新地町駒ケ嶺に所在する、相馬共同火力発電株式会社が運営する主要な火力発電施設です。

概要

この発電所は、東北電力株式会社と株式会社JERAがそれぞれ折半出資して設立された相馬共同火力発電によって運営されています。1990年代半ばに建設が進められ、最初の発電設備である1号機が1994年7月に、続く2号機が1995年7月にそれぞれ営業運転を開始しました。合計2基の発電設備を備えています。

発電所が立地する新地町および隣接する相馬市にかけての一帯は、電力供給拠点を核とした地域産業振興のため、相馬中核工業団地として計画的に整備されています。

燃料と環境対策

新地発電所で主に使用される燃料は、海外から船で運ばれてくる石炭です。この石炭は相馬港で直接陸揚げされ、発電所に供給されます。相馬港における石炭の取扱量の大部分を、当発電所が使用する燃料が占めています。発電過程では、石炭の燃焼を安定させる目的で、助燃剤として重油や軽油も少量用いられます。

近年、地球温暖化対策への意識が高まる中、低炭素社会の実現に向けた取り組みとして、石炭に加えて再生可能エネルギーである木質バイオマス燃料（木質ペレット）の混焼が導入されています。これは2015年3月より実施されており、環境負荷の低減を目指しています。

発電設備

新地発電所は、以下の設備構成となっています。

総出力：200万kW
敷地面積：約182ヘクタール

各発電号機の詳細は以下の通りです。

1号機
定格出力：100万kW
使用燃料：石炭、木質バイオマス
蒸気条件：超臨界圧（Super Critical）
熱効率：41.89%（高位発熱量基準）
営業運転開始：1994年7月

2号機
定格出力：100万kW
使用燃料：石炭、木質バイオマス
蒸気条件：超臨界圧（SC）
熱効率：41.89%（高位発熱量基準）
営業運転開始：1995年7月

蒸気条件である「超臨界圧」は、水を非常に高い圧力と温度にすることで効率よく蒸気タービンを回す技術であり、石炭火力発電の高効率化に貢献しています。

特徴

発電所から立ち上る排煙のための煙突は、高さが200メートルにも達し、その巨大さは地域のランドマークとなっています。天候の良い日には、直線距離で約50キロメートル離れた宮城県仙台市街の高層ビルや丘陵地帯からも、その姿を確認することができます。

地震による被災

発電所は、過去に発生した大規模地震により複数回にわたり被害を受けています。

東北地方太平洋沖地震 (2011年3月11日)：この地震により、運転中であった2号機が自動停止しました。当時定期点検で停止していた1号機を含む両号機で設備損傷が発生し、運転停止を余儀なくされました。その後復旧作業が進められ、同年12月19日に2号機が、12月27日に1号機が運転を再開しました。翌2012年3月20日には、両機ともに石炭のみを燃料とした定格出力（100万kW）での運転が可能となりました。

福島県沖地震 (2022年3月16日)：再び地震に見舞われ、1号機が自動停止しました。さらに、相馬港にある発電所専用の埠頭に設置されている4基の揚炭機（石炭を船から陸揚げする設備）のうち、2基が地震による揺れで損壊するという被害が発生しました。

沿革

新地発電所および運営会社である相馬共同火力発電の主な沿革は以下の通りです。

1981年6月：相馬共同火力発電株式会社が設立される。
1990年8月：1号機の建設工事に着手。
1991年8月：2号機の建設工事に着手。
1994年7月：1号機が商業運転を開始。
1995年7月：2号機が商業運転を開始。
1995年10月：PR施設「わくわくランド」が開設される。
2011年3月：東北地方太平洋沖地震により被災し、発電を停止。
2011年12月：2号機（19日）および1号機（27日）が運転を再開。
* 2015年3月：木質バイオマス燃料の導入を開始。

新地発電所は、設立以来、地域の基幹電源として重要な役割を担うとともに、大規模地震による被害からの復旧を経て、安定供給と環境対応の両立に努めています。

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