新増東国輿地勝覧

新増東国輿地勝覧（しんぞうとうごくよちしょうらん）

『新増東国輿地勝覧』は、李氏朝鮮時代に編纂された地理書であり、独立した地理志としては現存する最古の資料です。1530年に中宗の命により、李荇（イ・ヘン）、尹殷輔（ユン・ウンボ）、申公済（シン・コンジェ）らが編纂を行い、全55巻から成るこの書は、朝鮮全土の地理や文化に関する詳細な情報を提供しています。

歴史的背景と編纂経緯

この書の編集には長い歴史があり、1477年には『八道地理志』が完成されていました。この文献は、南宋の『方輿勝覧』や明の『大明一統志』をモデルとしており、各地の郡県ごとの沿革や風俗、山川、名所などを整理し記述していました。しかし、初版は民間への流通が禁止されたため、1486年に再度修正されることになります。

その後、燕山君時代にさらなる改訂が加えられ、最終的には1530年に中宗の命によって増補され、現在伝わる形が完成しました。この書は1958年に大韓民国の古典刊行会によって出版され、以来多くの人々に親しまれています。

書の構成と内容

『新増東国輿地勝覧』は、道別、郡別に分けて情報が整理されており、以下のような構成を持っています。

• - 巻之一、巻之二：京都
• - 巻之三：漢城府
• - 巻之四～巻之五：開城府
• - 巻之六～巻之十三：京畿道
• - 巻之十四～巻之二十：忠清道
• - 巻之二十一～巻之三十二：慶尚道
• - 巻之三十三～巻之四十：全羅道
• - 巻之四十一～巻之四十三：黄海道
• - 巻之四十四～巻之四十七：江原道
• - 巻之四十八～巻之五十：咸鏡道
• - 巻之五十一～巻之五十五：平安道

各道の冒頭にはその地域の全図が掲載され、各地の沿革や姓氏、人物、駅院、事蹟、詩人の題詠など、多岐にわたる項目が収録されています。この書は地方社会の多面的な情報を百科辞典のようにまとめており、当時の朝鮮社会を理解する上で非常に重要な資料となっています。

対馬島に関する記述

中でも注目されるのは、巻23の東萊県（現・釜山広域市）に関する記述です。「日本国対馬州なり。旧（もと）、我鶏林（慶尚道）に隷属す」という一文があり、ここから生じた対馬に関する領有権問題が今日まで続いています。朝鮮が対馬を韓国領と主張する根拠は、この書に見られる記述にさかのぼります。第二次世界大戦後、韓国は対馬の領有権をアメリカ及びイギリスに求めましたが、歴史的な根拠からその主張は却下されています。

八道総図について

さらに、書には「八道総図」も附図として収載されています。この地図は、朝鮮の地域をまとめて視覚化したもので、竹島（韓国名：独島）に関しても言及されています。韓国では古文書や古地図の中に独島だとされる于山島を探し求めていますが、この地図上に描かれた「于山島」は鬱陵島の西に位置しており、実際の位置関係が異なります。そのため、竹島であることはあり得ないと日本側では主張されています。

結論

『新増東国輿地勝覧』は、その多岐にわたる情報と深い歴史的背景を持つ書であり、朝鮮の歴史や地理を知るための貴重な資料です。議論の多い領土問題の文脈でも重要な役割を果たしており、現代においてもその影響は色濃く残っています。

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