新宝島 (曲)

新宝島：サカナクションの代表曲とその軌跡

2015年9月30日にリリースされたサカナクションの11枚目のシングル「新宝島」は、映画『バクマン。』の主題歌として制作された楽曲です。バンドのフロントマンである山口一郎が作詞作曲を手掛け、映画の世界観とサカナクションの音楽性が融合した、独特の魅力を持つ一曲となりました。

制作背景とコンセプト

「新宝島」の制作は、映画『バクマン。』のプロデューサーである川村元気氏からの依頼によってスタートしました。川村氏は、サカナクションの音楽性が『バクマン。』の世界観に合致すると判断し、主題歌の制作を依頼したと言われています。

山口一郎は、楽曲制作にあたり、漫画を深く研究。手塚治虫の『新宝島』から着想を得て、楽曲タイトルに採用しました。楽曲のテーマは「線を描く」という、漫画家と音楽家に共通する創造の苦しみや喜びを表しています。映画監督の大根仁氏からは、「押しつけがましくない卒業ソング」というテーマも提示され、映画のエンディングシーンともリンクした、奥深い作品に仕上がっています。

当初は「タッチ」というタイトルが予定されていましたが、『タッチ』という既存の漫画作品とタイトルが重複するため変更されました。制作期間は1年2ヶ月にも及んでおり、メンバーの休業やスランプといった困難を乗り越えて完成に至った経緯も明かされています。

音楽性と構成

「新宝島」は、レトロなシンセサイザーサウンドと、1980～90年代を彷彿とさせるリズムパターンが特徴的な楽曲です。ミニマルな構成でありながらも、キャッチーなメロディーと、サカナクションらしい独特のグルーブ感が魅力です。楽曲は、Aメロとサビのみというシンプルな構成で、サビは過去の楽曲「蓮の花」、Aメロは「多分、風。」といった楽曲の要素が組み込まれている点も特徴です。

テンポは75(Free)-158、調号は変ロ長調/ト短調と、近年の作品とは異なるアッパーなポップミュージックの要素も持ち合わせたオルタナティブロック、ダンスミュージックに仕上がっています。

ミュージックビデオとカラオケ映像

ミュージックビデオは田中裕介監督が手がけ、昭和歌謡番組をオマージュしたレトロな演出が話題を呼びました。一方、大根仁監督が手がけたカラオケ映像は、80～90年代のカラオケ映像を再現したもので、大根監督が『バクマン。』をセルフパロディーしたストーリー仕立ての作品となっています。山口一郎もバーテンダー役で出演しています。

チャート成績と評価

「新宝島」は、Billboard Japan Hot 100で1位を獲得するなど、商業的にも大きな成功を収めました。オリコンシングルチャートでも9位を記録し、日本レコード協会からデジタル・ダウンロードでダブル・プラチナ、フィジカルでプラチナのゴールドディスク認定を受けています。

音楽評論家からも高い評価を受け、オリジナリティあふれるサウンドメイクや、キャッチーなメロディー、歌詞が賞賛されています。また、一般リスナーからも高い人気を獲得し、2015年の思い出の曲ランキングにもランクインするなど、幅広い層から支持を得ました。

プロモーションとその後

発売前にはラジオ番組で先行フルオンエアーが実施され、発売後には握手会や、様々なメディアでのタイアップも展開されました。2018年末から2019年にかけては、SNS上で「音ハメ動画」が流行するなど、新たなムーブメントも巻き起こしました。

「新宝島」は、サカナクションの新たなスタートを象徴する楽曲であり、彼らの音楽性を広く知らしめるきっかけとなった作品と言えます。映画とのタイアップ、個性的なミュージックビデオ、そして中毒性のあるメロディーなど、様々な要素が相乗効果を生み出し、ロングヒットを記録したのです。楽曲は現在も、様々なCMや番組テーマソングとして使用され、聴き継がれています。

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